第五回


スタスタと二階へ上がり、忍足は不二を目で探した。
ほどなく不二は見つかったが不二はぼんやりと外の風景を見ていた。
「不二?」
自分が目の前にいることすら気づいていなかったようで、あきらかに今まで見たことのない不二だった。
「あ、ありがとうね」
無理やり急に作った笑顔でアップルパイと烏龍茶を受け取り、話を切り出した。
「それで?」
「はい?」
「それで何のようがあって僕を呼び出したのかな、忍足くんは」
「好きな人に逢うのに理由なんているんか?」
ストローをくわえながらニヤっと忍足は不二の反応を見た。
いつもの不二なら頬を赤らめて照れるはず。
なのに今日の不二はまるで別人のようだった。
「なにそれ」
ひんやりと体の芯まで凍るような目でこちらを見ていた。
「なにそれって言葉の通りや」
「ふ〜ん」
絶対零度の返答が返ってくる。
しかし忍足はめげないどころかゾクゾクしてきた。
不二の本性が垣間見えたようで、今までヴェールに包まれていた秘密が暴かれるようで楽しくなってきたのだ。
「なんでそんなに冷たいん?なんや、オレと逢うの嫌やってんか?」
「そんなことないけど」
いつも忍足が見ている不二とは想像もつかないくらい冷たい反応だが、
ウソかどうかの見分けくらいはつく。
これは本当。
じゃあ不二は何で機嫌が悪い?
そう、思いつく答えは1つ。



「そんなに手塚くんと帰りたかったんか?」
鎌をかけてみただけだった。
しかし予想以上の反応が不二から返ってきたのだ。
不二の頬には血液が上昇し、赤くなり、目は驚きで見開かれていた。
「な、なんで!?」
さらに動揺のためか声も上ずっている。
ビンゴ、だったのだ。
ここまで素直な反応をしてくれると仕掛けた方としてもおもしろい。
「不二は妙なトコで素直なんやな〜。顔真っ赤やで?」
「・・・」
ニヤニヤと笑いながら不二をからかう忍足を不二は獣のような目で睨んでいる。
その目はいつも見ている笑顔の数倍も美しい。
ギラリと怒りで満ちた双眸は不二が生きている温度を感じさせてくれる。
いつもの人形みたいな微笑みよりずっとずっと魅了される。
「じゃ、不二。オマエは手塚とどうなりたいん?」
からかうような笑いを忍足はやめ、真剣な目で不二の両目を見つめていた。
「え・・・?」
「オレがどうにかしてやってもええんやで?」
ニヤリ、と忍足は微笑みまたしても不二を見つめた。


TO BE CONTINUED・・・


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