第三回目
「おう、不二!」
ぱたぱたと可愛らしい音をたてて走ってきた不二を確認するなり忍足は嬉しそうに微笑んだ。
忍足のところに駆けつけた不二は息を整えながら途切れ途切れに忍足へ話しかけ始めた。
「急に、逢おう、とかって、どうしたの?」
不二が呼吸も整わないうちに話しかけてくる姿がなんとも愛らしく感じられて忍足はまた微笑んだ。
「不二ってほんまにかわええな〜」
小声で呟いたため不二には聞こえていない。
聞こえていたらまた、その反応が可愛らしいのだろうが。
「あっ」
急に不二が思いついたように振り向き珍しく大声を上げた。
「手塚バイバ〜イ!また明日ね!」
不二が親しげに手を振ってる人物を忍足もじっと見つめた。
そこには眼鏡をかけた大人びた長身(と言っても自分と同じくらいだろうが)の男が佇んでいた。
<なんやアイツ・・・>
こちらの視線に向こうも気づいたのだろう。軽くコチラに会釈をしてきた。
「あ、ドモ」
忍足もぎこちなく会釈を返したがその瞬間ゾワリと寒気を感じた。
向こうの男の視線に、ナニかただならぬものを感じ取ったのだ。
向こうに佇んでいる男はコチラを、忍足の方を見ている。いや、睨んでいると言った方がよいのかもしれない。
怒りとも何とも言えない目で自分を睨んでる。
熱いようで冷たい目で。青い炎のような目で。
<なんやねんな・・・>
「じゃあな、不二。また明日」
それだけ言うと男は踵を返して逆方向へ歩いていった。
忍足は何故自分が睨まれたのか納得いかない様子で不二に尋ねた。
「なぁ、不二、今のヤツだれなん?オレめっちゃ睨まれてんやけど。どういうことや」
不二はキョトンとした目でオレを見上げていたが、すぐさま笑いだした。
「ハハハハ、あのね、彼、ウチの部長の手塚っていうんだけど彼すごい目悪くてね。
しょっちゅう”睨まれた”とかって言われてるんだよ。
眉間に皺とか寄せちゃってるしね。だから忍足くんの勘違いだよ。
初めて見た人にもそんな風に言われちゃうのか手塚って。アハハおもしろい」
不二が何でそこまでおかしいのかオレには分からなかったし、
こんなに頬を紅潮させて他人のことを話す不二も今まで見たことがなかった。
「なんや、オレの勘違いかいな〜」
いちおう笑って見せたが内心納得していなかった。
アレは目が悪くて睨んだような目ではなかった。
仮にも忍足だって「天才」とよばれている部類の人間だ。
人が本気かそうではないかくらいの見分けはつく。
<あの男、危険やな・・・>
ふと、不二がこの男のことを話している笑顔を思い出した。
楽しそうに頬をばら色にして話す不二。
<あぁ、不二はほんまはアイツのことが・・・>
勘がいいということは時折知りたくもない事を知らされてしまうものだ。
忍足は気づきたくもなかった不二の本当の気持ちを知ってしまった気がした。
<せやけどオレはここで身を引くようなヤツちゃうで、手塚・・・。それと不二・・・>
クククと忍足はこみ上げてくる笑いを抑えきれずに笑い出してしまった。
「なんだ〜?忍足くん一人で笑ったりなんかして。今日はみんな変なの〜」
「なんでもないわ。はな、マクドでも行こか?」
<みんなおかしいのはオマエのせいや、不二>
忍足は不二の肩に手をまわして二人で駅の方向へと歩いて行った。
TO BE CONTINUED・・・
←/BACK/→