第二回

不二をせかして速く着替えるように手塚はうながした。
手塚自身は部室の戸締りをしなければならないので、不二が着替え終わるのを待たざるを得なかった。
不二が着替えをしている間、手塚はぼんやりと不二を眺めていた。
いや、見とれていたといった方がいいのかもしれない。


不二の色素の薄い、透明感あふれる肌。
無駄な肉のないしなやかな身体。
力をこめて抱きしめてしまえば折れてしまうような腰。
サラリと動く度に首筋にかかる薄茶の髪の毛。
不二を象る全ての要素が異様に艶かしく、見た者全てを魅了する魔力を持っているようだった。


「手塚・・・?何見てるの?」
ハッと気が付くと不二が自分の方を訝しげにこっちを見ていた。
手塚は不二に見とれていたなど口が裂けても言えるはずはなく、
「ちょっと考え事をしていたんだ、気にするな」
と答えになっていないような返答をするのが精一杯だった。不二はクスリと笑い
「変なの〜」
と、着替えを終わらせ帰り支度をし始めた。
不二が鞄をとろうとロッカーを開ける。
そんな他愛もない仕草一つ一つが何故か今日はやたらと艶やかに感じられ手塚の動悸はトクトクとスピードを上げていく。
「不二・・・」
「はい?」
「ついでだから一緒に帰るか?」
「そうだね、そうしようか。ってアレ?」
またしても不二のケイタイから軽快な着信音が鳴り響いた。
不二は着信ディスプレイに一瞬だけ目をやり、電源ボタンを押した。
「まずは帰りの支度しちゃわないと、ね?」
こちらに微笑みかけた不二の顔に手塚は今までにないほど心臓が跳ね上がった。
ドクン、1つ激しく手塚の血液は脈を打ち始める。


コノママデハ危ナイ・・・


手塚の本能は彼に話しかけていた。
このままここにいると不二に対して自分が何をしてしまうのかわからない。
ともすれば、不二を傷つけるようなこともしてしまうかもしれない。
自らの欲望によって。この穢れた思考で。彼を汚すかもしれない、と。
ドクン、とまた脈は強く打ち始めた。手塚は自らを律するためにも、
穢れのない想い人不二を汚さないためにも自分の腕をギュッと握り締めた。爪の痕が残るほど。
「さっきから手塚変じゃない?ホラ、帰り支度終わったよ。帰ろう帰ろう」
不二に背中を押されて部室の外にでた。外の冷たい空気が激しい動悸をクールダウンさせてくれた。



ピピピピピピ
不二のケイタイがまたしても鳴り出した。
「はい不二です。忍足くんどうしたの?」
『今な、丁度塾の授業終わってな。ほら、オレ行ってる塾青学の近くやんか。そんで逢いたいな〜思ってな』
「今度の土曜日に会うでしょうが」
『そんなつれないな〜。ってかな、実は今青学の門の前におんねん。不二んち行きたいから道教えて〜な』
「うそ!?僕、今帰るとこだよ。部室の前」
『ホンマ!?ほな一緒帰ろうや』
「え・・・でも・・・」
『なんや遠慮することあれへんやん。なんか都合悪いことでもあんのか?』
「友達が一緒なんだ」
クルリと不二が手塚の方を振り向いた。
その不二の目を見ただけで手塚は不二が何を言わんとしているのかだいたい察知できた。
「オレのことは構うな。先帰ってろ」
ニコリと不二が微笑みかえしてくれた。それだけで十分といえば十分だった。
「ごめんね、手塚!このお詫びは今度するから!」
不二は走って「忍足」というヤツのもとに行ってしまった。
もしこれが菊丸や乾ならばもっと晴れ晴れして気分だろう。
なにか釈然としない気持ちだったが、内心ホっとしたところもあり・・・
なにやら複雑な気持ちを抱いて手塚は帰路についた。


TO BE CONTINUED・・・

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