「ぼくを、だいてよ。てづか」
ドクリ、ドクリ、と心音が早まり 激しく打つのを感じ、
不二に悟られまいと平静を装うために出した言葉は震えていた。
「な、何を言ってるんだ不二?」
あえて自分も同じ気持ちだったとは言わなかった。
言ってしまえば両者合意の上の行為と相成るだろうが、不二が何故そんなことを、
「だいて」だなどと言ったのかという方がオレの欲望を吐露するのよりも興味深かった。
今まで物言わぬ人形のようにオレの欲望を 受け止めてきた不二だ。
自ら望んでオレに抱かれたがったことなどないのではないのか。
そして今ここで不二が抱いて欲しいと、 抱きついている。
気にならない方がおかしい。
「不二?」
あまりに長い沈黙を守る不二に答えを求めて話しかける。
何故、今、不二 はオレに抱かれたがってる?
「いいから・・・だいて・・・」
オレの首筋に顔を埋めたまま耳元で不二が囁く。
心持ち声が震えていた気がしたが ますます密着度を上げて抱きついてくる不二にもはやオレの理性など塵に等しい。
「おねがいっ!!」
ぎゅっとまたしても抱きついてきた不二 の香りに乗って消え去ったのはオレのなけなしの理性。
不二の首筋にそっと舌を這わせ、ビクリと反応する不二に満足感を覚え、
さらなる満足感と 征服欲のほしいままに不二の身体に触れていく。
手で、
指先で、
舌で、
穢れたオレの目線で不二に触れていく。
時折耐え切れなくなった不二の喉から漏れる 熱い息と声がますますオレの中の獣を解放していく。
「ふぅっ・・・っ」
涙目になって快楽の吐息をあげる不二の姿は本物の遊女も敵わないくらいの 艶めかしさだ。
嫌がればいいのに涙を浮かべてまでオレにされるがままになる不二が哀れでならない。
その哀れに思う気持ちで不二に 触れる。
触れた皮膚から熱を帯び不二の身体に快感をもたらし、オレの欲望に火をつけるような声を上げる。
そのループを永遠に繰り返してもいいとさえ思った。
今この腕の中にいる愚かで可哀想な人形を愛しく思える。
「あっ・・・」
脇腹に痣を残した口づけで不二は声をあげ、手でオレの頭を探し、
胸元に抱き寄せ 包み込むように抱きついて艶やかな濡れた声で耳元で囁いた。
「もっと、もっとだいて・・・!」



ぼくがここにいたしょうめいに、
キミがぼくをあいしてくれたあかしに
てづか、ぼくをこわれるまで、だいて。
つみぶかいぼくを ゆるしてくれなんておもわないから
キミをおいてきえていくぼくをゆるしてくれだなんていわないから
たとえてづかのこころにありつづけるのがぼくじゃなくてもかまわないから
いま、ぼくをあいしてくれている?
ほんとうのぼくをあいしてくれている?
かこのぼくじゃない、いまのぼくを。
いまだけでいいから、ここにいるぼくをあいして・・・・




「てづかっ・・・」



ほんのりと太陽の光が二人が交わった部屋に差し込んでくる。
気だるい雰囲気のその光は優しく罪を払拭しているかのような暖かさを伴って
オレの双眸を開かせようと 賢明に部屋に光を差し入れる。
その眩しさの中、オレはそっと目を開け、瞬きをした。
日の光が美しいと思ったのは何年ぶりのことだろう。
いつもいつも追いかけてはオレの罪を暴こうと輝いていた太陽すら今は愛しい。
「不二・・・?」
手を差し伸べたら布地のひやりとした感触が手に触れた。
いつも隣にあるべき温もりがない。
あるのはただ一人ベッドでまどろむ自分の姿のみ。
抜け殻になったベッドの半分はもう 冷たく、そこには初めからなにもなかったのだと、
誰もいなかったのだと静かに語っていた。
「不二・・・!!!」



自らオレに抱かれた翌日、不二はオレの部屋から、オレの傍から、オレの檻から消えていた。



TO BE CONTINUED・・・


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