第八回


暗がりの中に二つのシルエットが横たわっている。
手塚が眠っている不二を抱きかかえてきたのだろうか、この暗がりは手塚の部屋だった。
手塚の部屋のベッドで二人は眠りに落ちていた。


真夜中、月が煌々と輝く中片方の影がモソリと動き出した。
プルルルルル
「もしもし?忍足君?」
『なんや、不二か?どうやったん?』
「成功!手塚ったら!」
『ほな、何!?不二、ロストバージンかいな!』
「忍足くんたらおっさんくさ!ってか恥ずかしいじゃん、そんな生々しいこといわれちゃあ」
『せやかてほんまのことやんか〜よかったな』
「ま、手塚が僕のこと想っててくれたのわかったし?忍足くんのおかげだよ。ありがとね」
「ん・・・」
不二の隣に寝ていた手塚が目を覚ましかけていた。
「あ、手塚が起きそう!じゃ、また後でね!ありがとう!」
『ほな』
ケイタイを切ったと同時に手塚が目を覚ました。
ぼんやりと宙を見上げて、そして不二を見た。
「不二・・・」
「何?」
そっと手を伸ばして不二の頬に触れた。
「本物・・・なのだな?」
「そうだよ。手塚」
不二がにっこりと微笑むのを見て、また手塚は夢の世界へと引きずり込まれていった。
「不二がいなくなる夢を見た。もう。離れるな・・・」
そっと不二を抱き寄せ、手塚は再び眠ってしまった。
「手塚・・・」
手塚の腕に抱きかかえられ、
一定のリズムを刻む心臓の音に耳を傾けながら不二は独り微笑んだ。


手塚を手に入れることができたのだ、と。
自らの魅惑的な肢体で彼をそしらぬフリをして誘い、そして抱かせた。
全て自分の計画通り。
手塚に嫉妬させ、自分への想いを自覚させた。そしてそのために忍足を利用した。
「ふふふ・・・」
手塚の胸の中で不二は再び微笑んだ。

罠にはまった手塚の哀れさ、自分の狡猾さに。





END

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