「不二は死んだよ、手塚」
氷の結晶のような乾の一言が手塚の瞳に、肩に、全身に降り注ぐ。
「な・・・」
力なく座り込み、乾を見上げる。
乾の瞳は先程の冷酷さと、そして一破片ほどの哀れみを含み手塚を見下ろしていた。
「不二は死んだんだ。10年も前に」
「う・・・嘘だ・・・」
手塚の腕が何か頼るものを求め、宙を彷徨い、乾の足に懇願するように絡みついた。
「嘘だろう?」
割れた硝子のような瞳で手塚は乾を見つめる。今までこんな手塚の表情、誰が見たことがあろうか。
しかし乾はただ、手塚を見下ろすだけで何一つ言葉を発しなかった。
ただ、首を横に振るだけで。ただ其れだけで乾の言っていることが嘘ではないことは明白だった。
「嘘だと言ってくれ・・・!!」
コンクリートの床を力一杯拳で叩きつけ其の場に泣き崩れた。
手塚の嗚咽だけが、無機質な部屋に反響していた。
「オマエだって、分かっていただろう」
足元で声を殺して涙を流す手塚を見ず、乾は言葉を紡ぐ。
「此処から不二を連れ出したのはオマエだ。不二の細胞を使ってアレを作り出したのもオマエの提案だ。
忘れたとは言わせないぞ、手塚」
キロリ、と眼球を動かし、手塚を一瞥する。
そう、全ては手塚が。
自らの再生のために。
自らの幸福のために。
作り出した夢物語なのだから。
「10年前のあの日、不二を殺したのはオマエだからな、手塚」
とどめの一言を乾が漏らす。
ビクリ、と手塚が肩を揺らし顔を上げる。
「オマエが殺したんだろう?不二を」
再び、絶対零度の表情に戻った乾が言葉を刺す。
「オマエがあの時、ドイツに行かなければな」
手塚の視界が一瞬、真っ暗になり、そして記憶が途切れた。
そして眼前にひろがったのはあの光景。
10年前のあの景色。
TO BE CONTINUED・・・
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