ひとりぼっち
キミはまたそうやって僕を置き去りにする。
「明日から、九州に行く。」
ふと見上げたキミの眉間。いつもの倍は深い皺が刻まれてる。
キミは僕になんて言ってほしいの?
「けれどな・・・」
言葉を濁して僕を見る。ねえ手塚。キミは僕になんて言ってもらいたい?
僕はキミの心が分からないよ。
だってキミは僕に心なんて開いてくれなかったじゃない。いつでも。
だから僕はキミとこんなに近くにいるのにこんなに寂しい。
いつでもキミの隣にいる僕はひとりぼっち。
「そっか」
にっこり笑って見上げて反応を見てみる。いつでもキミの期待に応えてあげたいから。
いつでもキミにとって心地よい場所でありたい。キミにとって僕が大切であるのなら。
「・・・」
ちらり、と僕を見下ろす長身の手塚の目は微妙な表情をしている。
僕の答えは彼の望むものじゃなかったみたい。じゃあ、何て言って欲しいのさ。
「それで、どうするの?」
「さぁ・・・」
また、だ。ここまできても僕に心を開いてはくれない。僕って手塚の何?
そこはかとなく腹の底から苛立ちと怒りが湧き上がってきた。
キミの心を分かれない自分に。
心を開いてくれないキミに。
こんなに近くにいるのにこんなに遠い二人の距離に。
僕の不確定な位置に。
「キミはどうするつもりなの?って聞いてるの」
苛立ちが言葉に表れて少しトゲトゲしい言い回しになる。
こんな自分にさらに苛立ちがつのる。こんな風に感情を表に出すなんて。
僕らしくない。こんなの僕じゃない。
「なに苛立ってるんだ不二は。オレのことだ。オマエには関係ないことだろう?」
ぷつん
何かが僕の頭の中で切れた音がした。
僕には関係ない、ね。キミにとっての僕はそんなモノなんだね。分かった。
やっぱり僕はひとりぼっち。
「ふ〜ん。」
もう、僕の居場所はココにはない。そう思ったら吹っ切れた気がした。
手塚に向ける視線が自覚できるくらいに冷たいものになっているのが分かった。
もう、手塚の隣にはいたくない。
「じゃ、ここで」
いつもより10分は早く手塚に別れを告げる。
「え・・・不二?」
唖然とする手塚を置いてボクは颯爽と歩き出した。
キミを僕の中から消し去ってしまうように。
キミにとって僕は必要ない。そう思い込んでしまえるように。
「不二!!」
背中に聞こえる手塚の声になんの反応も示さずにひたすら真っ直ぐ歩いた。
悔しくて出てきた涙を拭いながら。
真っ直ぐ真っ直ぐ・・・
涙が流れてくるのをこらえるために空を見上げたら星がキラキラ瞬いていた。
冷たい光を放ちながら瞬く星。
星の光で出来た僕の影はやっぱりひとりぼっち。
ひとりぼっちの長い影がアスファルトに伸びている。いつも隣にある長身のかげはもうない。
捨て去ろう。彼を。捨て去ろう。彼への想いを。
振り切るように夢中になって歩いた。途中空に瞬く星を見て、白い息を吐き出しては涙を喉に流し込んだ。
ドシン
星を見上げていたら正面から来た人に気づかずに不用意にもぶつかってしまい、道路に座り込んでしまった。
「うわ、ごめんなさい!」
条件反射でぶつかってしまった誰かに謝る。
「なんや、なんや!?」
都心ではそんなに聞かないイントネーションの言葉。
これが僕と忍足侑士との再開だった。
END
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