夢が見る、夢
「虎次郎?」
名前を呼ぶと、遠く彼が振り向いた。
水面に反射する太陽の光が眩しい。
その銀髪の煌きがまぶしい。
思わずその眩しさに眉をしかめると彼は微笑み、そして僕の目の前にいた。
まだあどけなさの残るその笑顔。
白い歯を出して、宝物を見つけたときのように微笑んだ。
「虎次郎」
そっと、彼の手が額に被さる薄茶の髪の毛を横に分けた。
「虎次郎?」
悪戯が見つかったときのバツの悪そうな笑みを零し、
額に軽く、キスをした。
「虎次郎?」
彼は何も言わず、遠くへ去っていった。
「虎次郎?」
何度呼んでも、残ったのはその太陽の煌き。
夢では、しゃべってくれない彼。
「周助?」
悲しそうな笑みを浮かべて此方を見ている。
何か悲しいことでもあったの?
自分が傍にいてあげるだけで、悲しみが癒えるなら。
そっと近く寄り添う。
深い、深い、深海よりも深い蒼の双眸がじっと、見つめる。
ゆらり、ゆらり波が揺れるよう瞳が揺れる。
「周助」
何ともないから、俺がお前の傍にずっといてやるから。
お前を悲しませる何かから、俺が守ってあげるから。
絹糸のような髪をそっと掻き分ける。
安心していいんだ。俺の傍でくらい安心していいんだ。
「周助?」
再び覗き込んだ瞳は先刻よりも蒼く、美しく、溜まった泪で光を帯びていた。
思わず、その額にそっと触れるだけのキスを。
「周助?」
瞳が全ての感情を表す彼
絶望したような、何も写さない瞳。
その表情に此方側が動揺してしまう。
傷つけてしまったのか?
「周助?」
何度呼んでも彼の瞳は何も語ってはくれない。
残ったものは深海で揺らめく、その深い蒼。
夢では、語ってくれないその瞳。
END
BACK