ミントタイム



「宍戸さん、明日部活休みですよね!うち両親仕事でいないんですけど泊まりにきません?」
今日も部活で忍足・向日ペアに勝った爽快感でいっぱいの部活後、
後輩の鳳長太郎からの突然切り出された一言。
断る理由のひとつもなかったし、鳳が目をキラキラ輝かせて誘うもんだから断るに断れなくて思わず
「あ、かまわねえよ」
と答えてしまった。


閑静な住宅街の片隅にある鳳家は洋風の立派な家だった。
鳳邸、といった方が似合うその家は周りのどの家より大きく、風格があった。
「すげーな長太郎んチ。でっけ〜」
「そうですか〜?」
本人は別に気にするわけでも自慢するわけでもはたまた謙遜するわけでもなくいつも通りのほほんとしている。
コイツの近くにいると本当調子狂わされる。
長太郎独特ののほほんオーラでこっちの毒まで奪われちまう感じだ。
「オマエってイイよな」
「へ!?」
調子ぬけした口調で長太郎がこっちを振り向いた。
その顔は榊監督がみんなにジュースをおごってやるぞと言ったときより5倍は”信じられない”といった顔をしていた。
「なんだよその顔!」
長太郎が急にそんな顔するからなんかマズいことでも言ったのかと思ってじっと長太郎の目を見ていたら、
徐々に長太郎の顔が赤くなってきた。
「だ、だって宍戸さんがそんなこと言うなんて・・・。嬉しいです!」
ガバっと長太郎がイキナリ抱きついていた。
「ぎゃ〜!!このバカ!やめろ!」
ばしばし背中を叩いても長太郎の方がガタイもいいしパワーもあるから動揺もしない。
しかもふっと足元にあった地面が消えたかと思うとオレは長太郎に抱きかかえられて家の中に連れていかれていた。
「ちょ、ちょっと待て長太郎!待てってばこのバカ!」
「いいえ、待てません!」
「こんなときだけハッキリすんな〜!!」
オレの叫び声が家中に響き渡った。
長太郎に抱きかかえられてるのに悪い気はしねえがさすがに運ばれてる、っていうのは恥ずかしい。
何より恥ずかしがって顔が赤くなってる事実を長太郎に見られるのがイヤで余計暴れてしまった。


ガチャリ


鳳邸の奥にある部屋まで連れて行かれてベッドの上にドサリと下ろされた。
「宍戸さん・・・」
ギシ・・・。ベッドに長太郎が乗り上げる。真っ直ぐな目で上から長太郎がオレの目を覗き込む。
濁りのない目。
純粋な・・・。
その目に見つめられると自分の内面、本心、まで見透かされるような感じがして目と顔を逸らした。
その顔を逸らしたと同時に無防備になったオレの首元に長太郎がキスをしてきた。
「あ・・・!」
ビクリと身体が反応をする。そっと長太郎が舌を這わせる。
「ヤメロってこのバカっ・・・っ!」
「今日、向日先輩たちに勝ったご褒美ください」
舌をオレの口にまで這わせてくる。
「っふっ・・・」
「宍戸さんの唇はいつもミントガムの味ですね」
いたずらっこのような笑顔で長太郎が笑いかける。
でもオレはもう、そんな笑顔に返してあげるような余裕もない。
「もう、いい・・・こいよ」
「ハイ」


長い間二人は1つになっていた。
フト目を覚ますと部屋の中は真っ暗。
隣では長太郎がだっこちゃん人形のようにオレに抱きつき寝息をたてていた。
今何時だろうと壁にかかっている時計を覗き込むため半身を起こした。
「ん・・・?」
オレが動いた振動で長太郎が目を覚ましてしまった。
「悪ぃ、起こしたか」
まだ寝ぼけまなこの長太郎に謝ると、居間にあるのだろうか壁時計から12時を告げる音がした。
「宍戸さん・・・」
ゆっくりと長太郎が手を伸ばしてオレの頬に触れた。
「何だ?長太郎」
「誕生日おめでとうございます」
長太郎は にっこり微笑み、ゆっくり起き上がって羽が触れる程度のキスをオレの頬にした。
「15歳の宍戸さんに初めてキスをしたのがオレですね!」
当たり前のようにオレを赤面させる長太郎がかわいくて、テレ隠しに
「このバカ!!」
と殴ってしまった・・・。
「やっぱりミントガムの味がしますね!」
にっこりとキューピー人形のような微笑みを浮かべた長太郎が顔を覗き込んできた。
祝われて嬉しくないわけじゃない、ただ 恥ずかしかっただけで・・・
「サンキュー、長太郎」
今度はオレの方からキスをしてやった。
そしたら長太郎、鳩が豆鉄砲くらったみてぇなツラしてんだもんな。
激ダサだけどオマエのこと嫌いじゃねえから言わねえでいてやるよ。
「だせーな、激ダサだな」って。



END



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