籠を買おう。
キミがすっぽり入る大きな籠を。
キミをオレ以外の誰の眼にも触れさせないように。
鳥籠
昼のうららかな日差しが入り込んで数多くの生徒がうつらうつらと睡眠状態に陥ってる3年6組。
いつもは真っ先に眠る英二が珍しく眼はぱっちりと開け、不二になんだかんだと話しかけていた。
「ねえねえ不二、今日から部活休みなんだよね?」
部活が休みなのがそんなに嬉しいのか足をバタバタさせながら英二が不二の顔を覗き込む。
「そういやテスト休みだったね」
いつものクセで不二はかわいらしく首を傾げて英二の方を振り返り、微笑む。
「あのさ〜不二にお願いあるんだけど聞いてくれる?」
「え?」
「古典でわかんないトコあってさ。古典って初日じゃん?だから不二に今日のうちに
教えてもらおうと思ってさ。ダメ?」
3年間同じクラスで同じ部活の英二の頼みを断るわけにもいかないしなぁ・・・
「うん、いいよ。じゃあ一緒に帰ろうか?」
またしても不二は首を傾げて英二の方に微笑みかける。
「やった!!じゃあオレ掃除当番だから待ってて!!」
「コラ菊丸!!五月蠅いぞ!」
「は〜い」
コレでキミを一人、閉じ込められる。
ニヤリ、としおらしく項垂れた影で一人ほくそえんだ。
「とりあえずお茶でも飲んでよ」
カタン、と音を立ててフレーバーティーがテーブルの上に置かれる。
「英二の家でこういうの飲んだときないかも」
「あぁ。オレも紅茶っつーと不二んチってカンジするけどさ、今姉ちゃんが紅茶にハマってるらしくてさ」
「コレ、いい香りするね。アールグ・・・レ・・・ィ・・・?」
不二が紅茶の銘柄を言い終わるか終わらないかのうちにその細く白い手から
純白のティーカップが音も立てずに零れ落ち、カーペットの上に不二もろとも転がる。
その数秒後、不二の口からは安らかな寝息がもれて来た。
八重歯を口の端から覗かせて英二が微笑む。
横たわる不二をそっと抱き上げて静かに閉ざされた瞼に口づけをする。
抱き上げた不二をベッドに寝かせ、そっと物音を立てぬようにクローゼットへ手をかける。
ギイイイ
ガシャン
不二が寒さに気づき、目が覚めると辺りは真っ暗で手足には冷たい金属の感触がした。
此処は何処?
寝ぼけた頭で一つ一つ記憶を手繰り寄せる。
そう、英二の家に来て、お茶をごちそうになって・・・それから?
それから先を思い出そうと思案していたら一筋の閃光が眼に飛び込んできた。
眩しさに眼をしかめ、手を翳す。
翳した手に金属製の手錠がはめ込まれていた。
その事実に恐怖と驚きを感じながら眼が慣れてきた光へと眼を移す。
「英二」
ほっと安堵の溜息とともに英二に手を差し伸べる。
その瞬間手と手を繋いでいた手錠が何かにひっかかり、伸ばされた手は無情にも英二に
届くことはなかった。
「何!?コレ!!」
周辺が明るくなりゆっくりと自分の置かれた状況を見て、不二は驚愕した。
金属製の手錠、足枷。
そして手を差し伸ばすことも許されない大きな鳥籠。
その中に自分は置かれていたのだ。
「英二。此処からだして?」
「いやだ」
一言だけ言い残して英二はまた僕を暗闇の中に閉じ込めて行ってしまった。
「英二!!英二!!」
繋がれた手で拳を作り、鉄格子を殴りつける。
ガシャンと金属同士のこすれる音がした。
金属に擦れて自分の手首が赤く、うっすらと血が滲んでいるのも分かった。
それでも僕はこの暗闇から出して欲しくて英二の名前をひたすらに叫んだ。
「英二!!!」
コレでかわいいあのコを一人締めできる。
もうあのコを他の誰にも触れさせない、見せたりなんかしない。
クローゼットの中から微かに聞こえてくる不二の叫び声を聞きながら
英二は一人、声をあげて笑った。
コレで不二はオレのもの。
もう2度とここから出してあげない。
オレの鳥籠から出してやらない・・・!!
END
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