散リユク僕ヲ
最初に華開いた自分の気持ち。
櫻舞い散るテニスコート脇、貴方はかつて長く美しかったあの髪の毛を
風に弄ばせながらぼんやりと果て無き目標を見据えていた。
魅かれていったのはその瞬間。
貴方のその消え入りそうな美しさと、その正反対に強い瞳と。
儚げに揺れる長い髪。
そっと手を差し伸べ触れたい衝動に駆られた。
いつもそっと背後から手を差し伸べた瞬間、貴方はこちらを振り向いた。
「何やってんだ?長太郎」
「別になんでもありませんよ」
にこやかに微笑んで、そっと誤魔化す。
こんな気持ち、散らせてしまえばいいのに。
貴方に知られて嫌われるならいっそ櫻のように潔く。
無造作に切り捨てられた宍戸さんの長く美しい髪はまるであの日、
宍戸さんに魅かれたあの瞬間に散り去った櫻のようだった。
あまりに潔く、そして美しく。
もう宍戸さんには風に遊ばせる美しい漆黒の長い髪もない。
それでも貴方はあまりに美しくて。
穢れを知らずに散りゆく櫻。
卒業証書を手に先輩方が笑いあい、涙しあう。
宍戸さんはその集団から少し離れたところで、少し寂しげな、
しかし優しい微笑みを浮かべ佇んでいた。
そして今日も櫻が踊り狂っている。
「宍戸さん、オレ、宍戸さんのこと好きです」
櫻と供に散りゆけこの想い。
少し驚いた瞳をした宍戸さんが櫻色の中からオレを見ていた。
その強気な美しい瞳で。
宍戸さんの口がゆっくりと開かれ、何かを言葉に乗せようとした瞬間
櫻色の吹雪が二人の間を駆け巡る。
吹雪が去ったとともに消えていたのは貴方の姿。
穢れたものすべてを拒絶するような真摯な背中。
オレはただ、宍戸さんの背中を目で追うことしかできなかった。
散りゆく想い。
櫻と供に。
END
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