春の日


3月末日。
離任式兼クラス発表で久々に部活以外の用事で学校へ行く。
今年こそは手塚と同じクラスに・・・と去年のちょうどこの日も祈っていた。
結局この2年は手塚と同じクラスになることなんてできなかった。
隣のクラスになることはできてもそれじゃあ意味がないんだ。
手塚の部活以外の姿を見ていたいんだ。
この想いを伝えることができないから、せめてずっとキミの背中を、姿を見ていたい。
そんなささやかな願いすらこの2年間は果たせなかった。
その腹いせに手塚とたまたま同じクラスになった大石をどんなにいじめただろう・・・。
大石には悪いと思うが、そうやって気を紛らわせてないと今にも手塚に自分の気持ちを伝えてしまいそうだった。
きっと手塚にそんなことを言ったらもう口もきいてくれないだろう・・・。
「周助〜!!学校遅刻しちゃうわよ〜!」
由美子姉さんの声で我にかえった。たしかに遅刻寸前の時間だ。
部活の朝練がないから油断してしまった。
「ああ、願わくば手塚と同じクラスになれますように」
そっと祈りながら学校へと向かった。


僕は天に見放されているのか・・・?
離任式後に見に行ったクラス発表の掲示板には”3年1組手塚国光”、
そして”3年6組不二周助”。
最悪だ。
隣のクラスにもなれなかった。
「はぁ〜」
思わず深いため息をついてしまったら、隣を歩いていた英二に気づかれてしまった。
「どうしたの、不二?具合悪いの?大丈夫?」
英二にまで心配されるくらいだから僕はよほどの顔をしていたのだろう。
「大丈夫だよ、何ともないから。さ、早くミーティング行こう」
嘘をついて英二をごまかし、そして自分をごまかした。
「遅いぞ、2人とも。」
部室に行くと僕と英二以外のレギュラーは揃っていたため、
入室するやいなや手塚に一言言われてしまった。
「ごめん、手塚。だって不二が掲示板からなかなか離れないんだもん。
好きなコのクラスチェックでもしてたんじゃない?」
英二のたあいない冗談に、一瞬自分の顔が赤くなるような感じがしたが、
「そんなことないよ」
と笑って冷静に答えられた自分がいた。そんな自分が不思議だった。
「どうでもいいから早く座れ。ミーティングをはじめる」
手塚の声に従って僕らは空席に座った。


「ウソ、だからね。」
ミーティング後に部日誌を書いている手塚にボソリとつぶやいた。
「何のことだ?」
手塚がまっすぐに僕を見る。痛いくらいにまっすぐ。
「英二がミーティングの前に言ったこと全部。」
僕の心が見透かされるような感じがして手塚から目をそらした。
「あぁ・・・」
そんなことかと言わんばかりの手塚に少しムカっときたけど、逆に安心もした。
僕の動揺もバレてないんだな、って。
「しかし3年間不二とは同じクラスになれなかったな。なんだか残念だな。」
一瞬にして血液が上昇してさっき以上に赤面しているような感覚がした。
「ご、ごめん、手塚!僕用事思い出したから先に帰るね!」
「あぁ。」
赤くなった自分を、手塚の何気ない発言に過度に反応する自分を見られたくなかった。
まだ、このキモチは知られたくなかった。
「僕、手塚のこと好きだよ。」
とキミの目を見て言えるようになる日まで知られたくはないんだ。

空を見上げれば春らしく青く澄み渡っている。
朝のモヤモヤしたキモチはどこかに吹き飛んでしまった。
キミの目を直視して想いを伝えるその日まで、
キミの言った「残念だ。」の一言とふと見せたキミの表情を糧にがんばっていこう。
キミと僕の距離が1歩近づいた、そんな気がした春の日。
青空の真下で走りだしたい気分をおさえながら帰路についた。



END



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