スノウホワイト



昨夜から降り続いた雪は早朝には止んでいたが、
まばゆいばかりの反射光を放ってカーテン越しに外を覗き込んだ不二の顔を銀色の輝きで照らしていた。
どうりで寒いと思ってた・・・。こんな雪の日は小さな時のことを思い出す。
裕太と二人で玄関前に大きな雪だるまを作ったこと、
姉さんに二人で雪うさぎを作ってあげて見せようと家の中に持っていったら
どんどん室温で溶けてきて裕太が泣き出しちゃったりもしたっけ。
一面の銀世界を見ながらクスリと一人笑い、学校へと向かう準備を始めた。
そのとき、朝早くだというのにケイタイの着信音が部屋に響いた。


誰だろう、こんな朝早くに・・・。


億劫な気持ちでディスプレイを眺めると「菊丸英二」彼の名前が。
「はいもしもし?」
「不二〜?オレオレ、英二!!」
こんな朝早くからでも英二は元気いっぱいだ。
子供は風の子とは英二みたいなコのこと云うんだろうな。
そんな英二の明るさが妙に面白くてまたクスクス笑いが零れてくる。
「朝早くからどうしたの?英二」
「超雪積もってスゴイからさ、不二も見てるかな!!って思ってさ。そしたら電話したくなっちゃったんだよね〜」
屈託のない笑顔の英二の顔が目の前に浮かぶようだ。
きっと英二は犬や幼稚園児のようにはしゃいで雪の中遊びながら学校に向かってるに違いない。
「元気だね、英二は」
「それでさ、今不二の家の前にいるんだよね〜。一緒に学校に行かない?」
「え!?」
不二の驚きはもっともだった。英二の家と不二の家は学校を挟んでほぼシンメトリーに位置している。
それなのに英二がうちの前にいる。それってどういうこと?
「なんで英二うちの前にいるの!?こんな朝早くに!」
いつもは穏やかな不二の口調もあまりの驚きに問い詰めるような口調になってしまう。
それに少し英二は驚きつつも何故だか妙に満足して笑い声とともに
「不二と一緒に真っ白い雪ん中歩きたかったんだよね」
と無邪気な返事をしてくれる。
「英二ってば・・・」
半分呆れて半分泣きたいくらい嬉しくて。
「ちょっと待ってね、今行くから」
電話が切れるのと不二が玄関から出てくるのがどっちが早かったのだろう。
玄関から不二が飛び出すようにして走ってきた。
「おはよ、不二!」
玄関の門に寄りかかった英二が寒さで赤くなった頬をほころばせてピースをしている。
「もう!!」
突進する勢いで不二が英二の胸に飛び込む。
その不意打ちの勢いで英二はバランスを崩して不二に抱きつかれたまま新雪の中に二人倒れこむ。
とっさに英二はお得意の体の柔らかさで不二を自分の上にするようにして倒れたのだけど・・・。
見事に二人は車のタイヤの跡すらない真っ白い冷たい絨毯の上に寝転がってしまった。
一瞬の沈黙の後、不二が英二の顔を上目遣いに見上げ、英二が不二の顔を見下ろす。
二人の視線がぶつかったと同時に湧き上がる笑い声。


「不二ぃ〜!!」
「だって英二がっ!!」
ぺたりと雪の上に座り込んだ不二が同じく雪の上に座ってる英二の頬にそっと手袋を外した手で触れる。
「こんなに冷たくなるまで外にいたっていうから・・・」
寒さ以外の理由で不二の頬がほんのり赤く染まる。
色の白い不二の顔と薄い茶色の髪。
そして薔薇色の頬と心配そうに見つめる青い瞳。
真っ白い景色によく似合う。このまま雪に溶けていなくなってしまってもおかしくないくらい。
「不二v」
そんな不安を払拭するように英二は冷たく、赤くなった不二の頬にチュっとキスする。
「心配してくれたんでしょ?」
いたずらっこのような瞳で英二がウインクする。
「英二ってば!もうしらないよ!!」
急いで行かなければ朝練に遅れて手塚に走らされるような時間まで二人は雪の上に座っていたようだ。
スクっと立ち上がった不二が英二を振り返り、
「早く学校に行かないと手塚に走らされるよ!」
と光を体いっぱいに浴び走っていった。
一人残された英二はのらりと立ち上がり、ぱさぱさと雪を払い落とす。
内心、また手塚手塚って・・・と不満がもたげたが走らされてはたまらないと
不二の背中を光を全身に浴びながら追いかけて行った。



END



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