しあわせなじかん
こんなにあったかくて天気のイイ日は好きなコとお弁当を持って出かけよう。
2人の大好きなおかずだけをつめたお弁当をもって。
キーンコーンカーンコーン
4時限目の授業終了のチャイムがなった。
「ハイ、今日はここまで。テスト範囲だからきちんと復習するように。」
英語教師が教壇を後にするのを英二はぼんやりとねむけまなこで見送った。
「英二また寝てたでしょ。」
すっと目の前に現れ微笑みかけているのは不二周助だった。
「不二〜vv」
「だめでしょ寝ちゃ。今日のトコとか絶対テストにでそうなトコだったのに。」
「だって眠くてしょうがなかったんだも〜ん。」
「確かにこの席じゃなあ・・・」
英二の席は窓際の1番後ろ。
真夏には暑くてどうしようもない最悪の席だが今日のようなあたたかい、
いかにも”春”といった天気の日には絶好のお昼寝スポットだ。
「だからって寝ていいわけじゃないんだよ。」
「は〜い。じゃ、不二昼メシ食べよ!」
「英二反省してる?」
「うん。してるよ〜。」
ふぅっと不二が笑いながら少しあきれたようにため息をついたが、英二は気にしない。
この昼食の時間だけが、今の英二には唯一の楽しみなのだ。
先日の席替えでこのお昼寝スポットをゲットしてラッキーと思った瞬間、
今まで近くの席だった不二と完璧に離れてしまったのだ。
不二の席は廊下側の前から3番目。ほとんど対極状態である。
部活が忙しい2人は休み時間に次の授業の予習をしなければならないため、
休み時間に話すヒマなどない。
だから不二と唯一一緒にいられる昼食の時間は英二にとって楽しみ以外の何物でもないのだ。
「あ〜vv今日はオムレツが入ってるにゃv」
姉が作ってくれた弁当を開けながら英二は嬉しそうな声をあげた。
「本当、英二はオムレツ好きだよね。」
「ふわふわに限るけどね。」
ふふっと不二が微笑む。英二といると小さな子どもといるような感じがして、優しい気持ちになる。
英二の行動はどこかかわいらしく憎めないのだ。
「英二のお姉さん、料理上手だよね。」
不二は英二の幸せそうな顔と弁当を交互に見て言った。
「不二のお姉さんほどじゃないよ思うよ。」
英二は満面の笑みで受け答える。
不二と一緒にいること、弁当にふわふわオムレツがはいっていること、
姉の料理を不二に褒められたこと全てが嬉しかった。
「あ、英二ほっぺにごはんつぶついてるよ。」
「え?どこ?」
「いいよ、とってあげる。」
そっと不二の手が英二の唇にほど近い頬に触れる。
「はい、取れた。」
不二はひょいっと英二のほっぺたからとったごはんつぶをなにげなく食べた。
そんな不二にとっては自然な動作が英二にはとても嬉しいものだった。
自分のほっぺについていたごはんを大好きな人がとって食べる。
まるで新婚夫婦みたいだと英二はにっこりほほえんだ。
「英二何笑ってるの?次の授業は本当に寝ちゃダメだからね。」
昼食を食べ終わった不二は次の授業の予習のために自分の席へ戻っていった。
不二は英二が抱いている不二に対する淡い恋心に気づいていない。
それでもいいと英二は思う。
”変に意識して今みたいなコトできなくなる方イヤだもんね。”
キーンコーンカーンコーン
5時限目の授業開始のチャイムがなる。
ふわふわオムレツでおなかが、不二のなにげない行動で心がいっぱいだ。
それにこんな気持ちいい日差しがトッピングされたんじゃ寝るしかない、と英二はまた眠りについた。
こんなにあったかくて天気のイイ日は大好きな不二とお弁当をもって出かけよう。
2人の大好きなおかずだけをつめたお弁当をもって。
英二はまたしてもしあわせな夢の中へとおちていった。
END
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