like an apple


「ファーストキスってレモンの味するんでしょう?」
たまたま会った帰り道。
道に生えていたのを引っこ抜いた草をいじりながら千石くんは切り出した。
急にそういうこというからちょっぴりびっくりした。
千石くんは僕以上にきまぐれなのかもしれない。
自分より気まぐれな奴がいる、それだけでなんだか面白くって笑いを持っていかれた。
「急に何言ってるの〜?」
「いや、なんとなく気になってさぁ。気になんない?」
「なんないよ〜。そんな女の子じゃないんだから〜」


クスクス笑う不二がかわいい。
いつも微笑んでいるけど、「笑った」ときの顔が一番かわいい。
ちょっぴり頬をピンクにして笑うあたり、はっきり言って耐まんない。
今日はそんな笑顔が見れてオレちょっとラッキー?
実は今日会ったのだってたまたまじゃないんだけどね、偶然を装わなきゃ怪しまれて警戒されちゃうから。
たまたまだって不審がられてさっきまで笑顔1つ見せてくれなかったんだもん。
かわいい不二に似合うかわいい話題を選んだのは正解。
さすがだ、オレ。
今日の占いで恋愛運がTOPだったおかげかな。
この日をどんなに待ちわびたか!! 恋愛運が最高の日でもなきゃ不二に声かけらんないからね〜・・・。
あのドーベルマンみたいな手塚くんがいつも一緒にいるからな〜。
あぁいうお堅いのはオレちょっと苦手・・・。
いつも不二と手塚くんは一緒帰ってるみたいだけど 今日はどうやら委員会かなんかでいない。
天までオレの恋を応援してくれてる、そんな気分。


「だってさ、レモン嫌いな人だっているのにレモンの味とかっておかしくない?」
いたずらっこみたいに目をくるくる、さっきひっこぬいた猫じゃらしもくるくるさせながら千石くんが振り返った。
「だから、きっと最初に”レモンの味がする”って言った人がレモン好きなんだよ!」
ビシっと指をさされて確信を持って言われちゃっても困るんだけどな〜・・・。
でも千石くんの言ってることキライじゃない。
「もしかしたらそうかもね」
「でしょ!?きっと好きな果物の味がするんだよ!」
「なんで果物限定なの?食べ物じゃなくて?」
「だってオレ、お好み焼き好きなんだけどさ、キスがお好み焼き味の男ってイヤだもん。イヤじゃない?」
「ぷ〜自分勝手〜!」
そんなくだらないっていうか、妙なところで真剣に悩んで考える千石くんは本当におもしろい人。
手塚と一緒のときなんてこんなに笑ったりすることない。
千石くんは冗談で人の心を軽くすることができる人種の人なんだろうな。
それってすごいことだし、そういう人って惹かれる。


「千石くんっておもしろいね!」
満面の笑みを浮かべて不二がオレを見てくれた。
あぁ、もうかわいい!
「千石くんみたいな人ってイイね」
にっこり微笑んだまま不二が放ったその一言。
スイマセン、告白と受け取っちゃっていいですか?
「じゃ、不二は何が好き?」
「僕?僕はリンゴ」
リンゴと不二が言い終わるか言い終わらないかの間にオレは不二にキスをしていた。
勝手に身体が動いてしまったんだ。
オレのファーストキス。リンゴが大好きな不二とのキス。
あぁ、たしかに。リンゴの味がするよ。
甘酸っぱいリンゴの味が。
「ん〜!!」
びっくりして目を見開いていた不二が我に返って両腕を掴んでいたオレの手を振り解こうとして暴れだした。
「何すんだよ!?」
いつもの温和な不二にはありえない、今にも殴りかかってきそうな口調でオレに罵声を浴びせた。
「信じらんない!」
でも非難されながらオレは気づいてしまったんだ。
不二が耳まで真っ赤にしていることを。
あんなに甘酸っぱいおいしいリンゴの味がしたのは不二もファーストキスだったからに違いない。
ラッキー。
「ねぇ、不二もファーストキス?」
嬉しくて嬉しくて聞かずにはいられなかった。
これで違ってたら奈落の底まで落ち込みそうだけど。
「そうだよ!!」
怒りながら不二はオレを追い越してズンズン歩いて行ってしまった。
「待ってって!!そんなに怒ると焼きリンゴなっちゃうよ〜」
「最低!」
口では最低とか言ってるけど、不二、笑ってんじゃん。
やっぱり、かわいいな〜。
オレは生涯こんな甘酸っぱいリンゴは食べたことないよ!
ごちそうさま、不二v


END



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