キミといた夏


カラコロカラコロ・・・
チリリン、チリリン・・・
カラカラカラカラ・・・

下駄の音、夜店の風鈴の音、風車の音、
はしゃぐ子どもの声、威勢のいい屋台のおじさんの声。
いろんなものがごちゃまぜになったこの場所で俺は見つけてしまったんだ。
大好きな彼、不二周助を。

腰のあたりで走り回る子どもたちの波をかきわけて不二のところへ一直線に駆け寄った。
「不〜二!」
「あれぇ、千石くんだ。どうしたの?」
「不二こそどうしたの?浴衣なんて着ちゃって」
「うん、姉さんに着せられたんだよ」
恥ずかしそうに頬を赤らめて不二は微笑んだ。
それもそのはず。
不二の着せられていた浴衣は見るからに女物の可愛らしい紺地に蝶がついた柄だったのだ。
そんなの普通の友人が着ていたら120%ヒく。
でも着ているのはあの不二だ。
青学だけでなく他校からも華だ天使だスイートハニーだと言われているコだ。
かくいうオレも不二を天使だとか思ってる輩の一人なんだけど。
だってかわいいんだもん。
普段は青学ジャージでキリリとキメてみたり学ランで正統派美少年をきどってみても不二の可愛らしさは隠れようがない。


いたずらっこのように微笑む顔、
おだやかなトーンで話す口元、
遠くを見つめる蒼い瞳、
サーブを打つときにチラリと覗く白い肌、
試合のときにだけ見られる生足。


どのパーツからも不二の可愛らしさが零れ落ちてキラキラ輝きながらみんなの目に入ってゆき、魅了される。キラキラ輝く不二のかわいい欠片がオレの目に入り込んで煌きを増して今、こんなに不二に夢中だ。
「似合ってるよ、不二。とってもキュートv」
「そんな、恥ずかしいよ!しかもキュートって・・・そんなこと言われて喜ぶ男いないよ!?」
今度はちょっぴりむくれて頬を赤くして、そっぽを向いている。
あぁ、なんてかわいらしいんだろう!思わず抱きしめてあげたくなるくらいかわいい!!
っていうかもう抱きしめていた。
「や〜千石くん!?何!?」
「不二ったらあんまりかわいくって!」
ぎゅっと抱きしめた不二の腰は予想以上に細くて余計にドキリと心が弾んだ。
腕の中にいるちょっと夏には暑い、けど人より低い体温はオレの腕に心地よくフィットした。
ぎゅっと腕に力を込めてますます不二を抱きしめた。
「千石くん苦しい!」
腕の中でばたばたもがく不二がかわいくってかわいくって口元がにやけてしまう。
「ごめんごめん!」
ぱっと不二を離してあげたらじっと不二がオレを睨んでいた。
怖い目つき。でもそんな目で見られるのもゾクゾクする。

バーン  バーン
打ち上げ花火が夏の終わりを告げるように夜空に彩りを加える。
「さっきはごめんね?一人なんでしょ?花火もっと綺麗に見える場所があるんだよ。一緒に行かない?」
にっこり人のいい笑みを浮かべて不二を誘ってみる。
さっきまで睨んでいた瞳もすっかり花火の魅力に輝いている。
「行く。連れてって」
不二の手をひきながら人の波を逆流してゆく。
はぐれないように、離れないように不二の手を引き、きつく握り締める。
この人ごみを抜けたと同時に不二がいなくなってるなんてことがないように。


「ここだよ」
不二の手を引きながら5分ほど歩いて行き着いた草むら。
こんな虫の多そうで、隣にはお地蔵さんのいるところ、普通の人なら来ない。
「あ、蛍!」
こんな都会でも蛍なんているんだね・・・と不二がはしゃぐ。
花火が打ちあがるたびに感嘆の息をあげ、不二の顔が花火と同じように彩られていく。
そんな中、オレはそっと不二にキスをした。

花火の輝きの中重なりあった二つのシルエット。
影絵かステンドグラスのような二人の姿。

不二とのキスはこれが最初で最後。二人で過ごした夏はもう思い出の彼方。
毎年花火があがる度にオレは思い出すのだろう、キミといたあの夏を。




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