授業が終わるまであと3分・・・2分30秒・・・。
終業のチャイムが鳴る時間をカウントダウンし始める。
ダラダラと無駄に授業を延長しようとしか聞こえない社会科の教科担任の声はもう耳には入らない。


授業よ早く終われ!!


小さい頃見た魔法使いのアニメの呪文のように心で唱える。
授業が終わるまであと1分・・・。





RUN





終業のチャイムと同時に授業が始まる前にほぼ帰り支度をし終わっていた鞄をひっ捕まえて教室を飛び出す。
社会科の教科担任が自分よりも早く教室を出たオレに向かって背後で何かを叫んでいたが
そんなものはさらさら無視して3段飛ばしで階段を駆け下りる。


「うわっ」
階段の踊り場で地味ーS南とぶつかり、南の持っていたプリントの束がひらひらと
宙に舞う。
「メンゴ!!南!!」
言葉だけの謝罪を交わし、オレは玄関へとひた走る。
「ってコラ千石!!」
踊り場には南の叫びだけがこだまして、オレのいた気配はすっかり消え去った。
「オマエ部活どうすんだよ!!」
階段を降りきったあたりに響いてきた南の声。
「サボる!!」
振り返りもせずに叫び返す。


だって今日はあのコに逢いに行くから。


終業から1分、さすがに誰もいない玄関ホール。
急いで靴を履き替え、体育が終わり教室へ帰っていくヤツらと入れ違いでグラウンドに走りでる。
「千石さん!?」
驚いたような室町くんの声が聞こえた気がしたが、相手にしているヒマはない。


だってあのコが待っているから。


学校を1番乗りで飛び出していつもの街角へ。
不二の大好きなアンティーク調の喫茶店の近くの時計台。
それがオレらのいつもの待ち合わせ場所。
寒い中手を吐息で温めて待つ不二を見るのも大好きだけれど
寒いからこそ大好きな不二を待たせるわけにはいかない。

学校前の横断歩道を渡って
あの角を曲がって。
ヒトゴミを掻き分けてそこの交差点を過ぎればほら、ちょっと背の小さな時計台の下に。


「あ、清純くん」
オレに気づいてやんわりと微笑む。
その微笑みを1秒でも多く見たいがゆえに走ってきたのだから。
「待っ・・・た?不二・・・」
息も途切れ途切れに不二に話しかける。そんなオレを見て不二はまた微笑む。
「清純くんってば汗だくだよ。冷たい飲み物でも飲もう?」
にっこり微笑んでオレの手を取る。
そのか細い白い手はひんやりと冷たく、心地よかった。
そして
「不二、どれくらいオレのこと待ってたの?」
「ちょっとだけ」
その冷たい手は言葉とは裏腹に、長い間オレを待っていてくれたのを物語っていた。


だって彼が逢いにきてくれるから。
1秒でも早く彼に逢いに行こう。



END


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