その目を見てはいけない、何故なら―――――

油断すればするほど、世界が狂わされるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忍足の眼下には戦場と化した後の、あるいは戦場となる前の地が広がっていた。そこは昼間、コートという境界線を挟んで黄色の弾をうち合う。・・・テニスと言う競技の名のもとに。

ただ、今は夜の闇でひっそりと静まり返っていた。明日になればまた声援で活気づくのだろう。

しかし彼の見ているものはコートではない。じっとコートを見つめる1人の人物だ。

(どこがええねん、あんなん)

自分の学校、同じ部活の跡部景吾。彼は今目の前にいる人間を気に入っていると言う。それが理解できなかった。

美人、だと思う。それを手に入れるのも面白いと思う。けれどそう思うだけで、正直な話それだけの理由で好きになるほど跡部が安い人間だとは思えない。

『あんなんのどこが好きなん?勿論十分美人やねんけど』

『お前の知った事じゃねぇだろ』

『それもそうや。せやけどどうせなら出るとこ出たオネーサンの方がいいんちゃう?』

気になるのは跡部の最後の言葉。

『その考えを変えたくなかったら、アイツの目は見んなよ』

くつくつと喉を鳴らして笑うだけで、あとは何も答えようとはしない。それだけが妙に気になった。

(不二周助、ね。男やんか)

視界の方向、コートの外で何を思っているか、虚空を眺めるその少年の方へ忍足は向かう。跡部が異様に気にかける実態を知りたいがために。

「こんばんは」

ふいにくるり、と不二は振り向き満面の作り笑いを浮べた。どうやら忍足の存在に気付いていたようだ。まじまじと見つめたいたので不二であれば当たり前ではあるが。

不二はただその挨拶をしただけで、すぐに忍足の横をすり抜けて帰ろうとする。

忍足はその少年の腕を掴んだ。

「どうも。俺氷帝学園の忍足侑士言うねん。よろしゅう」

「よろしく」

さも面倒そうに短く答えてその腕を振り解こうとするが、掴んだまま離してはくれない。不審そうに眉をひそめた。双眸からは琥珀の瞳がのぞいている。

(目見たけど何も起こらへんで。跡部、虚言癖があるんちゃう?)

お互い、それでも顔には笑顔を貼り付けたままである。

何だか忍足はがっかりしてしまった。どれほどの人材かと思ったのに、何のことはない。所詮彼はただの男で、跡部は男色家だったのだろう。

(おもろないわ。ちょっと苛めてさっさと帰ろ)

期待を裏切られたのでちょっとした切り札を使って、それで終わることにした。実の所、忍足は不二と手塚の間に仲間以上の何かがあることを知っていた。誰に言われた訳ではない。ただ、跡部を見ていて分かった。お世辞でも人当たりが良いとは言えない跡部がある瞬間、何よりも憎々しげな目をするときがある。瞬きをしたら見逃してしまうほどの一瞬。

彼は手塚を睨む。不二の隣にいる手塚を、この上ないほどに。

それで察したのだ。なるほど、と。

「実は不二に言いたい事があんねん」

「何?」

「手塚国光のことなんやけど」

不二の顔色が変わる。途端に真剣な目になった。先程とは違った、真剣な目。その琥珀が意思を持ち、忍足の中で何かがざわめく。

怒らせてみたかった。ただ、2人が付き合ってるのを知っている、と告げるだけでは済まない。それ程度では多少驚くだけで動揺はしないだろう。

その目を怒らせてみたい。何かが起こる気がするから。

「自分、手塚と付き合っとるやろ?せやけどもっと慎重になった方がええで」

「どういう事?」

「アイツ、以外に可愛らしい反応すんねんな。奪ってまうかもしれへんで、俺」

「そう・・・」

架空のコメントに穏やかな返答で返す。嘘が分かったのかと思ったが、それは違った。手塚の事だからだろうか、真実に見境が無くなってしまっている。

激しい瞳だった。先程の色を映さない瞳ではない。怒りを宿した深い瞳を真っ直ぐに忍足ヘ向ける。

今まで不二の何を見ていたのだろう。上辺の作り笑顔を浮べた姿を見て美人だと?

馬鹿らしい、詭弁にもならない。今の彼はもう今まで見ていた彼ではなかった。

「何があったのか知らないけど、奪えるものなら奪って見せてよ。君には出来ないよ。だって、」

言葉の節々に宿るのは感情。・・・許さない、と。

不二は感情に身を任せてこそ、その魅力を発揮すると知った。

身を焦すほどの憎悪の目。美しく凄惨な、畏怖とも呼べる紙一重の美しさ。

「僕は君に取られるほど間抜けじゃないからね」

穏やかな夜を具現化した姿が嵐の空に変わった瞬間。

見たい、もっと見たい!

「なるほど」

まざまざと跡部の言葉が蘇ってくる。

―――『その考えを変えたくなかったら、アイツの目は見んなよ』―――

(見てもうたわ。衝動も抑え切れそうにない)

どこが良いか分からない、などと言ったかつての自分は正気か?それとも今現在が狂わされているのか。

「な・・・に・・・?」

手に、入れたい。その美しさを自分のものにしたい。

「ちょっと、どういう事?」

その醜悪なまでの美しさも、真実の微笑みも。

「離して」

見てみたい。全てを手に入れたい。

「離せ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その目を見てはいけない、何故なら―――――

油断すればするほど、世界が狂わされるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

end

 

 

 

 


 

 

 

 

急遽変更した村上ちゃんのHP開設祝い祭(?)もともとがかいらんちゃんと交換だったので全然ふさわしくない内容になっちゃったvv

さてさて、かいらんちゃんはこんな腹グロな忍足は好きですか?あと最後に何あったんだよって感じですよね、スミマセン、誤魔化しちゃった・・・