夏の幻、残暑の現実
「もう知らないから!!」
手塚の部屋のドアを乱暴に開けて僕は部屋を飛び出した。
「不二!!」
背中に手塚の呼ぶ声が聞こえたが僕は耳も貸さずに炎天下の中へ駆け出していった。
暑くて目が回る・・・。手塚の家を飛び出してから15分歩いた辺りで視界が揺れた。
この感覚はよくない感覚だ・・・。
そう、今にも倒れそうなときにくる眩暈だ。
これだから夏は駄目なんだ・・・。
グラリと僕の体が傾き、意識を手放しかけたその時、薄れていく意識の中で聞きなれない声を聞いた。
「オイ、あんた大丈夫か!?」
かすれてぼんやりとした視界に映った人は誰かに似ていた。最愛の彼に。
・・・・手・・・・塚・・・・・?
倒れこんだ自分の背中に人の手の温度を感じた。
そしてそのまま僕は意識を手放した。
フと目を覚ますと僕は見知らぬ部屋の見知らぬベットに横たわっていた。
「ん・・・?」
「目、覚めたん?」
あぁ、この声はさっき聞いた。
「姉ちゃん、この暑いのに無理したらアカンて。
駅におったら姉ちゃんイキナリ倒れたやんか。俺めっちゃビビったわ。そんでもう大丈夫なん?」
あぁ、この人が助けてくれたんだ・・・。って姉ちゃん!?
「ちょっと!!姉ちゃんって誰のこと!?僕、男だよ!!」
「はぁ!?ほんまか!?
なんや、そんなんやったら助けるんやなかったわ〜・・・イタイわ〜ほんまに・・・」
この関西弁を話す彼はどうやら僕のことを女のコと間違えて助けたらしい。
何てことだ。
手塚と喧嘩してきたイラだちと女の子に間違われたという屈辱が腹の中で混ざり合って怒りとなって込み上げてきた。
気づいたら僕はメガネの彼を思いっきり睨みつけていた。
メガネの彼は僕が睨んでいることに気づかず、僕の顎に手をかけて顔を覗き込んだ。
「ほんまに男なんか〜こんなべっぴんやのに〜なんや詐欺師かいな〜」
僕の顔を覗き込んでいる彼の顔があまりに情けなかったので、おかしくなってきて笑いが込み上げてきた。
「あははっキミおもしろいね!」
「やっと笑ったな。アンタなんか辛かったんちゃうか?さっき寝てるときかてずっとうなされとったで?」
「え・・・?」
「あんたが倒れたのかてなんかツライことのせいなんとちゃうか?」
「そ、そんなことないよ?」
初めて会った人にここまで自分の気持ちを読まれるとは思わなかった。
手塚と付き合うようになってから数ヶ月、手塚に愛されていることだけは分かった。
でも正直ツラかった。
手塚が多忙すぎてで僕にかまってられる時間があまりに少なかったのだ。
手塚と付き合うまで自分がこんなに独占欲と嫉妬の強い人間だなんて知らなかった。
僕に付き合う時間はないのに、どうして・・・?という疑問が常につきまとって自分にも嫌気がさした。
それでも僕を想う手塚の気持ちを、僕が手塚を想う気持ちも捨てれなかった。
捨てるには大きく、重すぎた。
「なに言ってんのキミ?おかしいよ・・・アレ?」
自分の本当の気持ちをやすやすと読まれたなんて思われたくなかったから無理にでもメガネの彼に笑いかけようとしたら、
不意に涙がこぼれてきた。
「なんや、泣いとんのか・・・?ほんま女の子みたいな奴やな〜・・・ホラ泣くな」
そっとメガネの彼が僕を胸に引き寄せ、髪の毛を撫でてくれた。
その手がとても優しかったので僕は余計に泣きたくなった。
「女の子みたいとか言わないでよ」
彼の胸の中で反論してみたが、目からは涙がハラハラとこぼれだす。
広い彼の胸は手塚を思い出させた。
そっと初めて僕を引き寄せた手塚の手は微かに震えていたっけ。
彼の胸の中にいるとどんどん手塚を思い出す。
そしてどんどん手塚を愛しく思わせる。
自分の中の手塚への想いをメガネの彼のおかげで再確認できた。
「助けてくれてありがとうね。僕、帰るよ」
そっと彼の胸から身を離して帰ろうと立ち上がったら、メガネの彼がまだ僕の手を掴んで離してくれなかった。
深刻な顔をして僕の手を握っている。
「え・・・?どうしたの?離して?」
「俺、アンタみたいな健気なのめっちゃタイプやねん・・・。どないしようか・・・」
「へっ!?」
予想外の彼の言葉に素っ頓狂な声を上げてしまった。
まだ彼は僕の腕を掴んでいるため逃げるに逃げれない。
「お礼っちゅーことでいいかな?」
「え?何が?って、ちょっと!!」
僕が状況もなにも分かってないうちにメガネの彼は僕にキスをし、さっきまで寝ていたベッドに連れ戻した。
「な?ええやろ?」
「よくないよ!!」
抵抗してもメガネの彼はもう聞いていない。僕の服を脱がし始めていた。
「ちょ、や、やだ!いやだ!!」
「おとなしくしい。悪いようにはせえへん」
「いやだっ、やめてっ!!」
また意識が薄れてきたこれはなんのせいなんだろう。
夢うつつにメガネの彼に抱かれていたような気がした。
それともあれは手塚だったのだろうか。
気が付くと自分の部屋のベッドにいた。
さっき僕を抱いたのは誰だったのだろう。
メガネの彼は何者だったのだろう。
彼は幻。真夏の太陽が見せた夢だったのかもしれない。
関東大会緒戦。
真夏の夢の彼が向こう側のコートに佇んでいた。
お互い何も知らない同士として。僕はメガネの彼と再会したのだった。
彼の名前は忍足侑士。氷帝のダブルスプレイヤーだった。
自分で書いててこれ、本当に塚不二←忍足なのか謎なってきた(笑)なんせ手塚ほんの少〜ししかでてないし?忍足って名前だしてないに等しいし?
こんなん姫乃ちゃんに負けるっちゅーねん!!(泣)
ってかこんなん押し付けられる村上氏がかわいそうや・・・