ラッキー☆ハッピー



俺の名前は千石清純。
人呼んでラッキー千石。
ラッキーだからと頭の上に象さんジョウロをつけている不思議なダンサーを連想してはいけない。
俺は類い稀な幸運の持ち主なのだ。
今思えばマイスイートハニー不二との出逢いも俺の幸運のなせる技だったのかもしれない。


青学の視察に行ったあの日。
女子テニス部にみとれていた俺の目の前に超激かわいこちゃんが現れたのだ。
透けるような白い肌に絹のような細い、色素の薄い髪。
そして何よりあの微笑み。
思わずそのコを目で追って後をついて行ってしまった。
そのかわいこちゃんが男、しかもあのウワサの「天才、不二周助」だと知ったときには
天地がひっくり返る程ショックだったがもはや関係ない。
ホレたらモノにするべし!その気合(気愛?)で俺は燃え上がった。
さっそく不二にケイタイ番号を聞こうと近づいていくと足元でカサリという音がした。
落ち葉でも踏んだのかと下を見ると白いメモ帳を足の下敷きにしていたのである。
「何だこれは・・・」
しゃがみこんで拾ったそのメモ帳を見て俺は固まった。その紙には

不二周助
090−××××−××××
fujisyu0229@docodemo.ne.jp

と不二のケイタイ番号とメールアドレスが書いてあったのだ。
何たる幸運。この時ほど自分の幸運に感謝したことはない。
「あ、英二に渡すケイタイ番号とか書いた紙どこかに落としちゃったみたい。」
「んにゃ?別に後でもかまわないけど?」
「本当?ごめんねー。」
10m先にいた不二とロンゲのばんそうこうの奴の話がかすかに聞こえた。
不二の声を聞けただけでも十分嬉しかったが、俺が拾ったメモ帳が不二直筆というので嬉しさ2割増し。
不二ったらなんてキレイな字を書くんだろう・・・v
そのメモ帳を学ランの胸ポケットに入れ意気揚々と家路についた。


その後の俺の努力は涙ぐましいものだった。
メル友募集を装ってメールを送ったり、声を聞きたいが故に不通知で電話をかけたり・・・。
けれど用心深い不二は俺のメールにも電話にも何のリアクションもくれなかったね・・・。
そこで俺は作戦を練った。都大会の間にこっそり不二のかばんからタオルを頂いておき、
拾ったので返す、という名目で電話をかけるという昔ながらの手だが、確実な方法だ。


タオルは無事入手した。
ああ今日は不通知で電話をかけなくてよいのだと妙な嬉しさをかみしめつつ、
震える手で不二のケイタイに電話をかけた。


TRRRRRR・・・
「はい、不二です。どちら様ですか?」
「あ、青学の不二くん?俺、山吹の千石なんだけど。」
「あぁ・・・Jr選抜の千石くん。どうしたの?何の用?」
「いや〜この間の大会で不二くんのタオル拾ったんだよね。だから渡そうと思ってさ。」
「あ、本当?わざわざごめんね。じゃあどうしようか・・・。」
「今度の土曜ヒマだったら、その日俺青春台に用事あるから返しにいけるけど?」
「じゃあ、お願いするね。時間は千石くんにあわせるから。」
「土曜の正午に青春台駅前の噴水ってのはどう?」
「いいよ。分かった。わざわざありがとう。じゃあ。」
不二が電話を切った後も俺は電話に耳をあてて不二の声の余韻を味わっていた。
不二の「千石くん」という響きがとても心地よかった。


おっと・・・いろいろ思い出していたら不二との約束の時間に遅れてしまう。
俺は急いで玄関を飛び出した。
「遅いよ清純くん」
不二が青春台駅前の噴水のヘリに座って待っていた。
「ごめん、ごめん。何か昔をイロイロ思い出しちゃってさ。」
「昔って?」
「ホラ、最初にデートっつーか2人で逢ったときの待ち合わせ場所もここだったじゃん。」
不二が隣に立っている俺を見上げて一瞬だけ驚いたように目を動かしてからふわっと笑った。
「僕も清純くん待ってる間同じこと考えてたよ。」
「じゃあ、今日のデートコースは初デートと同じコースにしよう!」
「そうだね。」
微笑みながら不二は立ち上がり歩き出した。
不二は俺を「清純くん」と呼ぶようになっていた。
不二にタオルを返して強引に映画に誘ったあの日から早3ヶ月。
キスもまだなのはアンラッキーだが不二が俺のデートの誘いを断らないのはラッキーだ。
キスくらいは実力でしてみせる!
ラッキー千石、只今ハッピーまっしぐら!!



END



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