クローディア



クローディア、クローディア。大人になれない女の子。
クローディア、クローディア。永遠の少女。


不二の家に泊まりに行って、一緒に見た映画。
映像にグロイところがあって直視できなかったけど、
この少女のことだけは脳裏に焼きついている。
「私はどうして大人になれないの」
と泣き叫んだ少女。
あぁ、クローディア。オレはキミの気持ちがよく分かる。


不二はみんなに好かれている。
不二を狙っているヤツは青学内だけじゃおさまらない。
氷帝の跡部、忍足、山吹の千石。他校のヤツらにまで言い寄られている。
青学内だって手塚、越前、タカさん。
みんな不二のことを手に入れたいって思ってる。もちろんオレも例外じゃない。
オレはたまたま3年になって同じクラスになったからみんなより気軽にこんな風に不二の家に泊まったりできるだけで。
実質、オレが不二を落とせる可能性なんてゼロに近い。
こんな可能性なら乾の計算なしでもできてしまう。
不二にとってオレは友達。へたすれば弟扱いだ。
せめて他のみんなくらいオレが大人だったら。
跡部みたいに口説いてみたり、タカさんみたいに思いっきり愛を叫べたら。
不二の前では甘えるのが精一杯だ。
きっと不二は寮に入ってしまった裕太くんのかわりにオレを甘やかしたいだけ。
そう考えていたらどんどん切なくなってきた。
あぁクローディア。オレは本当にキミの気持ちがよく分かる。
どうしてオレは大人になれない?


「英二?どうしたの?」
不二がヒョコっと顔を覗き込んできた。
「なんでもないよっ」
ふいっと顔をそむけてみせた。
こんな子どもじみた表現でしか感情を出せない自分に嫌悪感はつのる一方だ。
「何スネてるのさ〜?」
ころころと不二が笑う。蒼い瞳をゆらして笑う。
こんなとき、跡部だったら手塚だったらきっとかっこいい台詞を1つ吐いて
不二をドキっとさせることができるんだろう。
でもオレにはできない。
できないというより言えない。まだ、オレには恥ずかしい。きっと不二にも笑われる。
どうしようもない気持ちに押されてキュっと膝を抱えた。
なんだか悲しくて切なくて泣きたくなった。
「何、英二、泣いてるの?そんなに映画怖かった?」
そっと不二がアタマを撫でてくれる。昔、母さんがやってくれたように。
「違うよ。オレそこまで子どもじゃない」
ふふふと不二が笑う。
「そうかな〜?」
「そうだよ!!」
「じゃあ何で泣いてるの?」
言いたくなかった。言えば笑われる、そう直感したから。
でも不二の前じゃウソなんてつけない。深海の瞳でこちらを見つめる。
誰がこの瞳の前でウソなんてつけようか。
「どうしてオレは大人になれないのかなって」
「はぁ?」
「手塚や跡部や忍足みたいに不二を口説けないじゃん?
不二をかわいいなって思ってもみんなみたいにかっこいい台詞が浮かばないもん。
それじゃ不二をオレだけのモノにできないじゃん!
不二だってオレのこと弟みたいにしか思ってないじゃん!」
最後の方は叫びになっていた。
涙がハラハラと零れ落ち、不二は驚いた顔でオレを見上げ、次の瞬間いつもの五倍は綺麗な微笑みをみせてくれた。
「そんなことないよ?英二は英二、今のままがいいの。今のままの英二が一番大好きだよ?」
「じゃ、証拠は!?」
「え〜・・・・・・・」
少し考えてから不二はオレの頬に1つ、触れるだけのキスをしてくれた。
「これでいい?」
照れた不二の頬はほんのり薔薇色をしていて、いつもよりぜんぜんかわいく、愛しく思えた。
「オレも不二大好き!!」
そういうなりオレは不二に抱きついてその薔薇色の頬にいくつもキスをした。
「英二、くすぐったい!」
子猫のようにじゃれながらオレは思った。
不二が好きっていってくれるなら、オレは子どものままでもかまわない、と。



クローディア、クローディア。永遠の少女。
クローディア、クローディア。永遠の少女も悪くないかもしれないよ?



END



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