薫の災難〜改訂版〜
「海堂、テニスは精神面が大きく左右するスポーツだということは知っているな?
と、いうことで今日からは精神的な鍛錬も始めるぞ。」
乾に練習メニューを作ってもらうようになって早10日。
初めのほうは練習後のランニングなどでバテていた薫だったが、
3日もすれば練習メニューを楽々こなすようになり、たった10日とはいえ、
体力がついてきたように感じていた。
「精神的な鍛錬って何スか。」
薫は少し乾をいぶかしげな表情で見た。
薫は自分は精神力においては誰にも負けていないと心の中では思っていたので、
乾に自分は精神的に弱いと言われたようだったのと、
もっと体力をつけなければと感じていたのに「精神的な鍛錬」をするということに少しイラだっていた。
「海堂は今みたいに少し自分の気に入らないことがあったり、自分のペースを乱されたりするとキレやすいだろう。
もしかしたら敵もそこをねらってくるかもしれない。
だから、何事にも動揺しないような精神力を身につけなければならない。わかったかい?」
乾の発言はデータを基にしていることが多いため、ほとんどが正論だ。
今回の乾の発言も非常に的を得たものであり、薫には反論する余地もなかったので、
薫はイヤイヤながらも承諾した。
もしここで反対をしたらペナル茶を飲まされるかもしれないといった奇妙な不安感もあったのだが、
それよりたった10日で自覚できるほど体力をつけれるようなメニューを作ってくれた乾を
薫は信用しはじめていたのだ。
「じゃ、俺は何をやればイイんスか?」
「まぁ、いろいろと準備があるから待っててねv」
「ハイ。」
乾の語尾にハートがついていることになんか少しも気づかずに薫は素直に返事をした。
乾はいそいそと部室へ準備とやらをしに行ったのだが、その背中は心なしか嬉しそうに見えた。
乾が部室に入っていったのを確認し、薫はいつものため息をついてこれから自分が何をやらされるのかと考えを巡らせた。
何せあの特製汁やカラーコーンの練習の生みの親の乾である。
滝にでも打たされるのだろうかと薫はいささか不安になってきた。
「よし、準備完了!!さあ始めるぞ海堂!!」
気合の入った乾の声とともに部室のドアが開いた音がした。
「ッス。」
返事をして乾を振り返った瞬間、薫は凍った。そこには何と
青学女子テニス部レギュラーのスコートを着ている乾
が立っていたのだ。
「あ・・・あ・・・あ・・・」
薫は恐怖のあまり腰を抜かし、酸欠の金魚のように口をパクパクさせるばかりだった。
「どうした海堂?はやく練習を始めるぞ。」
乾が薫を立ち上がらせようと手を伸ばし1歩近づいてくるたびに
薫は腰を抜かしたまま後ずさりをしていった。
「はやくトレーニングをはじめないと日が暮れるぞ。」
乾がまた1歩ふみこんできたので薫も後ずさりをしようとしたのだが、
背中がフェンスにぶつかってもう薫に逃げ場はなくなってしまった。
観念して薫は立ち上がり、乾の方を見なければよいのだと自分に言い聞かせて足早にコートにむかった。
その瞬間、急に強風が吹き、薫はバンダナを飛ばされないようにとおさえていたら、後方で
「キャーvv」
とやたら声の低い女の声がしたため薫は思わず振り返ってしまった。
しかしソノ声の主は乾。薫は見たくもない乾のスコート姿をばっちり見てしまったあげく、
ご丁寧にも乾が着用していた総フリルのアンダースコートが
風で舞い上がったスコートからチラリズムしているのまで目撃してしまった。
薫は気を失いそうになるのを必死でこらえてコートにたどりついた。
「よし海堂、試合を始める。3セット先取した方が勝ちだ。」
「ッス・・・」
薫は吐き気を抑えてようやくコートに立っていた。
こんな状態で勝てるのだろうかと不安になってきた。
「ただし、今日俺に勝てなかったらこれから毎日女テニの乾vと試合をしてもらうぞ!
もちろん海堂が勝てるまでv」
滝に1週間打たれっぱなしのほうが100万倍マシだった・・・と薫は薄れゆく意識の中で嘆き、
そのままコートに倒れた。
乾のメンタルトレーニングは始まったばかりである。
END
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