「不二、氷帝の忍足と付き合っているという噂は本当かい?」
自慢のデータノートをひらひらと扇ぎながら乾が口元に意味深な笑みを浮かべて
此方を見ていた。






秘め事戯言




「え?」
何気なしに部活後着替えていた最中の不意打ちとも言えるような質問である。
しかも求められた返答はYES、NOではなく寧ろ事実確認のような口調で。
そんな乾の何の前触れもなく不意をつかれた質問だけに流石の不二も
いつものように飄々とすり抜けれるような返答はできず、
学ランのボタンを留める手もそのまま、凍り付いてしまった。
「どうなんだい?」
ポン、ポン、と肩にノートを軽く弾ませながら乾が質問を上塗りする。
その瞳は見えないけれど、
どうやらからかい半分、データ収集半分の野次馬根性さながらの好奇心が
この質問の原動力のようだ。

「どこから聞いたの?そんな話」
質問に質問で切り返す。
同一線上にあったままの視線を正面に戻し、
不二は凍り付いていた体の仕草を再起動させ、
学ランのボタンを1つ、また1つと留めていった。
「質問に質問で答えるなって言われなかったかい?」
乾の口角がまた、上がる。
「質問に質問で答えた上に、その視線の逸らし方。
答えはYESととってもいいのかな?」
なんだか乾に遊ばれているような気がしてきた。
ここはおおっぴらにYESといってしまった方が面白いのかもしれない。
でもそれも何だか乾のデータ通りの行動のような気がして釈然としない。
「YESだったらどうするの?」
不二もまた、乾同様意味深な笑みを浮かべる。
ただ、乾のと比べ不二の笑みは悪戯っ子が悪戯がばれたときに浮かべる
あの微笑のような色合いが濃かったが。
「別にただデータとして欲しい情報なだけさ。
不二のデータで正確なものも1つは欲しいからね」
「ふ〜ん」
また、不二が悪戯っ子のような視線を乾に向ける。
「たまには僕の正確なデータほしいよねえ」
チクリ、とトゲのある一言を笑みを浮かべたまま乾に投げかける。
「言うねえ」
「傷付いた?」
「ちょっとな」
ふふん、と満足げな笑みを浮かべて不二が視線を逸らす。
「嘘、だよ嘘。ただ、最近ちょっと一緒に出かけただけ」
「ふ〜ん・・・」
納得いかなそうな曖昧な返事をし、乾は不二の後ろ姿を見つめていた。



PPPPPPP
不二のケイタイの着信音が二人きりの部室に響く。
「はい?」
『不二?俺や。はよ出てきいや』
「ああ、今ちょっと乾に捕まってね」
『乾〜!?乾ってアレやろ、青学のデータオタク!!
何や不二、奴と何話してんねん?まさかスリーサイズ計らせたりしてるんとちゃうやろな!?』
「そんなことしないよ・・・侑・・・!!」
侑士じゃあるまいし、と言おうとして不二は背後の視線に気づき
ハッと素早い動作で後ろを振り向く。
そこには、口元に笑みを浮かべた乾が此方を見てなにやらノートに書き込んでいる。
やられた。
ここまで乾も計算していないだろうが、結果として先刻吐いた嘘が露見してしまった。
項垂れるように額に手をあてる。
『なんや、どないしたん不二!?乾に何かされたんちゃうやろな!?』
「なんでもないよ・・・今から行くけど、何処にいるの?」
『ああ、青学の校門前や』
「え・・・」
逃げ場は、ない。
完全に乾にバレた。
乾が楽しげな速度でノートにメモを走り書きしてる音が聞こえる。
「今、行く」
ブツリと鈍い音を立てケイタイを切る。
そっと後ろを振り向くと乾が勝ち誇ったような表情で部室のドアを半開きにしながら此方を見ていた。


「いいデータが取れたよ」
そう一言残して乾は帰宅していった。
「あ〜・・・」
脱力感だけが残るような不二の溜息が誰もいない部室に響いた。





END




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