ゴクアクフレンドシップ
「青学におもしろい1年がいるんだよ。」
屋上で2人でタバコをふかしていたら突然千石が切り出してきた。
「俺のターゲットだからお前は手を出すなよ。」
そう言うなり千石はタバコを消し、立ち上がった。
「お前、誰に指図してんの?」
亜久津はくわえタバコのまま千石を見上げた。
亜久津の目はすでにキレている目だったが、千石は気にもとめていない。
「お前だよ、亜久津。俺は部活に行くからな。」
千石は笑いながらドアの方へ歩いていき、軽やかに手を振りながら階段を降りて行った。
「クソ!!」
千石の後姿に亜久津は罵声を浴びせ、一息ついた。
どうも千石といると調子が狂うのだ。
他の人たちと違って千石は亜久津を怖がっていない。
しょっちゅう暴力事件だ、窃盗事件だと騒がれ校長室に呼ばれている亜久津を多くの生徒は恐れ、
目すらあわせないようにしていた。
それなのに千石は面白いおもちゃで遊んでいるかのように亜久津に接するのだ。
それが亜久津には少し腹立たしい。
”お前なんて怖くねぇんだよ”
と言われたあの日を思い出すからだ。
テニス部に伴爺に半ば無理矢理入部させられた初日。
亜久津は部員全員の前で伴爺に紹介された。
「新入部員の亜久津仁くんです。先日ここのテニスコートでスカウトしましてね。
都大会に山吹を導いてくれる強い味方ですよ。みなさんよろしくお願いしますね。」
テニスコートにいた部員のほとんどが凍りついた。
あの亜久津仁である。
校内で知らない奴は登校拒否をしている奴ぐらいの有名な奴だ。
しかもその知名度も数々の問題行動で得たものだ。
そんな奴が入部してきた・・・。みんなは亜久津と目を合わせないように練習に戻っていった。
ま、こんなもんだろ。
亜久津はコートのフェンスによりかかり一服しようとジャージのポケットから取り出したタバコに火をつけようとしたときだ。
「コートは禁煙だよ、亜久津。」
という声が聞こえてきた。自分に注意するなんてバカな奴。
どうせヒマだからツブしてやろうと声のする方向を見るとそこには同じクラスの千石清純がいた。
「なんだテメェ。誰に指図してんだよ。」
「亜久津だよ。タバコは体に悪いんだよ。分かった?仁ちゃ〜ん?」
プツリと自分の中で切れた音がした。
「誰が”仁ちゃん”だコラァ!!」
千石に向かって拳を振り下ろす。亜久津のパンチが千石にヒットし、
千石が吹っ飛んだ、と皆が思い、振り返ったがそこに見えたのは亜久津が倒れる姿だった。
倒れて腹をおさえている亜久津の前に千石がしゃがみこんでささやいた。
「俺はココで1番動体視力がいいんだよね〜。だから亜久津のパンチとかも見切れちゃうんだよね。」
笑いながら千石は亜久津を見ていたが亜久津はすでにキレて怒りに燃えている目になっていた。
亜久津は座り込んだまま千石に殴りかかった。
しかしまたしてもかわされ、逆に千石のラケットを喉もとに突きつけられていた。
「分かったぁ?俺はお前なんて怖くねぇんだよ。」
にっこり笑いながら千石は立ち上がって亜久津を見下ろした。
「コートでタバコはやめろよな。俺らが迷惑だ。」
そう言うと千石はまたテニスコートへ戻って行った。
「クソ!!」
亜久津も立ち上がり千石とは逆方向、コートの外へと出ていった。
「コラ亜久津!!」
屋上のドアが急に開き、生徒指導の先生がイキナリ入ってきた。
「なんだウルセェな。」
亜久津は驚くわけでもなくダルそうにタバコを吸っている。
「またタバコなんぞ吸いおって!今日こそは許さんぞ!生徒指導室に来い!」
「あ?お前誰に指図してんの?」
亜久津が少しすごんだだけで生徒指導の先生は怯え、1歩後ずさった。
「フン」
ゆっくりとタバコをくゆらせながら生徒指導の前を横切り校舎に入っていったら千石が踊り場にいたのが視界に入った。
「アレ?今回もお咎めなしなの〜?仁ちゃ〜ん?」
ニヤニヤしながら聞いてきた千石を見て亜久津はピンときた。
「チクッたのはテメェか!!」
「あはは〜そ〜だよ〜。」
千石は笑いながらその場から逃げていった。
「待てコラァ!!」
千石を追いかけている亜久津の顔はどこか楽しげで小さな子どもが鬼ごっこで遊んでいるような顔と、
今まで見たこともない優しい目をしていた。
END
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