Baby,love




周助は部活が終わった瞬間後片付けもせずに着替えて部室を飛び出すと、急いで校門へと走った。やはり彼はそこにいた。慌てて走ってきた周助の顔を見て、さも不機嫌そうに睨みつけながら。
「てめぇ、遅ぇんだよ」
「部活が長引いちゃって。どうこう言うなら手塚に言ってよ」
「あ?お前が抜けて来ねぇのが悪いんだろ」
「だってそんなことしたら明日僕が走らされちゃうじゃない」
「知るかよ、んなこと」
校門に預けていた体を起こして、景吾は悪態をつく。周助ははぁっとため息をついた。景吾は昔から性格がいいという訳ではなかったのだが、それにしてもこれほどまでに悪くもなかった。やはり景吾の通っている学校が悪いのだろうか、と思う。確かに何百人もいるテニス部員の頂点に立つと偉そうにもなってしまうかもしれない。
景吾は携帯電話を取り出すと時間を確認する。時計は6時をとうに過ぎていた。
「何?一緒にいられる時間が短くなって焦る?」
「下らねぇ事言ってんじゃねえよ。殴るぞ」
「こわーい」
ふふっ、と笑って周助は門からでる。それを確認して景吾も口元に笑顔を浮かべたときだった。
「待て、不二」
後ろから呼び止める声に2人が振り向く。そこに居たのは手塚だった。
「んだよ?」
逆に返事をしたのは周助ではなく景吾だ。眉間にしわを寄せ、明らかに機嫌の悪そうな表情を向ける。これ以上時間を無駄にするのもおしい。
「なんか用があんならさっさと言え」
「跡部君」
周助がけん制をする。その腕を引っ張る周助を見て、景吾はちっと舌打ちしてそれ以上言葉を紡ぐことをやめた。
「何?手塚」
「まだ明日の連絡が終わっていない」
「連絡なら今ここでしろよ」
「部室で他の面々と一緒に、だ」
「ここまで足を運んだならここで言っても同じだろうよ」
「いいから跡部君。今行って来るからもう少し待っててよ」
それを聞いて景吾はじろりと周助を睨みつける。
「てめ、これ以上俺に待てって言うのか?いい度胸じゃねえの」
「とにかく、埋め合わせは後でするから待って。行こう手塚」
そう言って周助は無理やり手塚の腕を掴むとさっさと立ち去ってしまった。
「いいのか?」
引っ張られながらも手塚は言う。誰がこうさせたんだよと思ったが、それでも周助はふふっと笑った。
「彼は少し心配性なの」
自分のことを心配してくれていると知っていた。彼の中で自分はずっと小さかった頃のままでとまっているらしい。それが面白かったし、まだ心配されているのだということで嬉しかった。
ずっとずっと前。
まだ年齢も一桁だったときの2人の記憶。















ふと、思い出す。まだ泣き虫だった頃の自分を。
『周、いつまで泣いてんだよ。あいつらならオレがおいはらってやっただろう』
助けてくれた幼い景吾の前で周助はぐすぐすと泣き続ける。
『っ・・うっ・・・だってぇ〜』
『弱虫!泣くなっつってんだろう!』
『うん・・・うん・・・っ・・でっ・・・でもっ・・・』
いつまでも泣き続ける周助に、景吾はしびれを切らして声をあらげる。
『おまえもおまえなんだよ。なんで言いかえさないんだよ!』
『だって・・・だって・・・』
ぱたぱたと頬から涙が流れ落ちる。
周助は幼い時、今ではありえないほどに泣き虫だった。そのせいか虐められやすい性格でもあったのだ。
その時いつも助けてくれたのは幼馴染の景吾だった。景吾は逆に幼い時から負けん気の強い性格で、どちらかと言えば虐める側でもおかしくない。でも、景吾はいつも周助を守り通した。喧嘩をしても絶対に負けなかった。周助はそんな景吾に憧れたものだ。
『なんか言ってくるヤツがいたら殴ってやれ』
『そんなのできたら苦労しないよゥ』
『あーっ、もう泣くな!!』
景吾はそう言うと周助を立ち上がらせる。
『いいか!?なんかあったらすぐオレを呼べ。そしたらオレがみんなやっつけてやるし、お前が口にできないこと、代わりにオレが言ってやる!だからもう泣くな!!』
『うん、うん』



「ふふっ」
「なんだ急に」
笑い出した周助に、歩きながら手塚は不審そうな顔をむけた。
「ねえ、跡部君がなんでさっき君にああいう事を言ったかわかる?」
「・・・知るか」
ふいっと顔を背ける手塚を見て、周助は再びふふっと笑った。
「僕が“行きたくない”って言えないんだと思ったんだよ、跡部君は」
まだ僕は彼にとって、頼りない子供らしい。
「思い知らせてやらなきゃ」
「何をだ?」
「もうそこまで子供じゃないって事」
















end


前に似たような話を書きました。すいません、楽をしました。ちなみに最後はヤるって意味です。(ここで言うな!)あまりに連日PCと向き合ってるので眩暈がします。いい傾向じゃないですよ、これ・・・。