夢が見る夢


夢を見たよ、優しい夢。
手塚が僕に優しく微笑みかけて、そっと僕の頬に触れるんだ。
「こっちへ来い、不二」
そしてアンティークの硝子に触れるように僕を抱きしめ、そっと口づけを交わす。
「大丈夫だ、不二」
最後に見たのはその微笑。
めったに垣間見ない手塚の微笑み。
そのとき僕はキミにどんな顔を見せていたの?



優しい笑顔を見た後はいつも独り仄暗い部屋で目が覚める。
そして決まって一筋の涙が左目から流れ落ちる。
いつも手塚がいる位置、僕の左側。
手塚がいるべき場所にキミがいない。
寂しいのだと左目が泣く。
キミがいないと左目が泣く。
キミ恋しさに左目が泣く。左目可哀想さに右目も泣く。
そして僕は独り悲しみに暮れる。



「不二・・・?どうした?」
いつもは冷たいベッドの左側にひどく聞き慣れた声を聞く。
ゆっくりと左を振り向くと寝ぼけ眼の手塚が僕を見上げる。
「泣いてるのか・・・?」
僕の左目から滴る透明な液体を骨ばった指で恐る恐るなぞる。
僕の頬を無骨な指が触れる感触がする。
嗚呼、此れは夢じゃない。
ゆっくりと僕の頬をすべる指を捕まえ、手を捕まえそっと頬を寄せる。
この温もりは手塚の温もり。
手塚の手に頬を重ねていたら知らずに右目からも滴る涙。
「大丈夫だ、不二」
夢の中と同じ台詞をキミが口にする。
嗚呼、僕はこんな顔をしてキミを見ていたのか。
「もう、泣くことなんてない・・・」
起き上がったキミがそっと僕の肩に手を回しゆっくり僕をベッドに倒す。
首筋に触れるキミの髪の毛のくすぐったさ、唇の感触は紛れもなく
キミの、手塚本人のものだった。



眩い光が閉ざされた瞳を抉じ開けようと半ば強引に差し込んでくる。
眉間に皺を寄せつつ瞳を開けるとそこは光の洪水。
そして隣には手塚の温もり。
温かい手塚の胸の中に頭を埋める。
もう、独りで起きなくてもいい。



再び目が覚めたら冷たいベッドに独り横たわる僕。
薄暗いその部屋には僕独り。
手塚がいたところには冷たい空気が横たわっている。
「手塚!?」
半ば半狂乱に手塚の名を呼ぶ。
僕はまた独りになるの?手塚は僕を置いて何処に行ったの?
「不二?」
背後でドアを開ける音がしたと同時に手塚の声が流れ込んできた。
「大丈夫だ、不二」
開け放たれたドアを背に手塚が手を差し伸べる。
「こっちへ来い、不二」
手塚の開け放ったドアが放つ光は二人目を覚ましたあのときの光に寒気がするほど酷似していた。



END


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何処からが不二の夢で何処からが現実かわからないような、でも幸せな話を書きたかった。
やっぱ書くのが1番楽しいのは塚不二だよ・・・