「学校が変わったらもう今みたいに会えないから・・・」
恥ずかしくて指をくるくる絡ませながら、地面を見てた。
不二と眼を合わせることも出来ずに言葉をつむぎだそうとして何度も挫けて
結局喉からその言葉は音としてでることはなかった。


キスだけでもしてもいい?


初恋


「ごめん、オレ、好きな人いるんだ」
六角中校舎裏。何時の間にか告白スポットとなってしまったその場所に3年間でもう両手じゃ足りないほどの呼び出しをくらい
同じ数だけ繰り返してきたその言葉を目の前で涙ぐんでいる女テニの後輩に言い放つ。
「いいんです、佐伯先輩、かっこいいですから、OKもらえるなんて思ってなかったんです」
「ごめん・・・」
いつも罪悪感でいっぱいになるこの瞬間。
相手の女の子たちは必ず泣きそうな顔をして走り去っていく。
残されたオレの気持ちも知らずに。
あんな風に泣きそうな顔をされたらあのときの周助を思い出す。
泣きそうな顔をして此方を睨みつけてそのまま、誤解をとくことも許されず走り去っていった周助。
最後に振り返った顔が涙でいっぱいだった。そう、今までオレの前から走り去っていった女の子たちのように。



「父さんの仕事が変わるんだ」
ギイギイ錆びた音のするブランコ。
夕陽を背にして並ぶ二つの小さな影。
ギイギイ軋む音に合わせて小さな影は近づいたり遠のいたり。
「それで?コジローはどうするの」
「は?どういうこと?」
「コジローは僕と離れてもいいんだ?」
「だってオレ一人残るわけにもいかないじゃん」
「ふうん・・・」
周助のこぐブランコの音が二人の間に横たわる。オレが続ける言葉を遮るようにブランコをこぎ続ける。
ぱっと飛び降りた周助がゆっくり振り返った。
「元気でね」
そしてそのまま走っていった背中に、言おうとした言葉はもう5年以上途切れたまま。


キスだけでもしてもいい?


さわさわと木々が揺れる、晴天の中のテニスコート。
関東大会のあの日、オレは走り去った背中以来の周助と向き合っていた。
「裕太くんとは仲直りしたかい?」
クスクス笑って大事なことをはぐらかすのは昔からのクセだ。
そして笑うたびに揺れる薄茶の絹糸のような髪の毛も変わらない。
ただ変わったのは互いを呼び合う名前が変わっただけだった。
「佐伯こそどうなの?」
「何が?」
「いろいろと」
クスクス笑い深い質問をするの変わっていない。昔ほどダイレクトには聞いてこなくなったけれども。
「オレさ、転校したときからずっと不二に言いそびれてたことがあるんだよね」
さりげなく、凍りついたあの言葉を紡ぎだす。
「何?」



「キスだけでもしてもいい?」
ふわりと和らいだその笑顔はOKの微笑み。
そして俺らは出会ってから数年、初めて心と身体を繋げた。



END


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佐伯不二!!初書き!!
甘い感じ目指したです。