「オチビ!アメ食うか?」
部室に入るなり菊丸先輩が飛びついてきた。
「日本の中学ってお菓子持ってきちゃいけないんじゃないんスか?」
朝から元気な先輩のテンションに多少なりともうんざりしながら冷ややかに言い返す。
あの人のいる前でこんなにべったりくっつかないでくれ。
「秘密だよ?越前くん?」
あの人がにっこり笑った笑顔は今日も目を見張る程美しかった。
キャンディ
「今日ね、姉さんが車で送ってきてくれてね。みんなで食べなさいって」
テニスバッグの中から不二先輩がごそごそと大量のキャンディを出してくる。
業者にでも売るんじゃないかというくらいの数のソレはもちろん不二先輩の細くて小さな白い手に納まるわけもなくコロコロと指の隙間から転がり落ちる。
「不二何落としてんのさ〜」
笑いながら菊丸先輩が不二先輩の掌に転がり落ちたキャンディを戻していく。
あの人の手に自然に触れられる菊丸先輩が腹立たしい。
「不二先輩、コレもッス」
1つ足元に転がり落ちたキャンディを何気ないフリをして手に戻す。
オレには触れることが許されない、聖者の手。
オレが触れればそこから穢れていくような気がしていた。
「ありがとう、越前」
ふわりと羽根が舞い降りてくるような笑みを浮かべ真っ直ぐにオレの眼を覗き込んでくる。
「どういたしまして」
その眼を見ているといつも引き込まれそうになる。そして直視することも出来ずにオレは眼を逸らしてしまう。
なんでも見透かしてしまうような不二先輩の瞳。
オレのこんな穢れた感情に気づかれたくなんてない。
その華奢な手を握り締め、そのまま熱い口づけを交わし、貴方を抱きたいだなんて考えている自分の思考回路がその綺麗な薄青の瞳には読まれてしまう気がするんだ。
「お礼に越前には2つアメをあげるね?何味がいい?」
「え〜不二!!オレも拾ったじゃん!!」
「英二はもういっぱい食べたでしょう!!」
菊丸先輩がむくれっ面でオレを見る。
クククっと笑いが込み上げてきたのは菊丸先輩と不二先輩の言い合いがおもしろかったわけじゃなくただ勘違いでも思い込みでもいい、不二先輩が菊丸先輩よりオレを選んだのが嬉しかっただけ。
「ホラ、英二。越前にも笑われてるよ?大人げない」
オレの汚い感情に気づきもしないアンタが大好きだよ。
「不二先輩は何食べてるんスか?」
額が引っ付きそうになるくらい近づいてきた不二先輩からは仄かに甘い、いい香りがした。
「ん〜?コレは苺かなあ」
「じゃあオレも苺がいいッス」
了解、とでも言いたげに不二先輩がまたあの柔和な笑みを浮かべる。こんなに近くで不二先輩の顔を見たのは初めてだった。
遠くで見るよりはるかに色が白くて、予想以上に睫毛が長く、薄茶というより金色に近い絹のように柔らかそうな髪がサラリとオレの額に重なってきた。その髪が触れるのとオレの箍が外れたのはほぼ同時だったような気がする。
「あ〜ごめん越前。もう苺味ないや〜英二がいっぱい食べちゃったんだよね」
片手に山盛りにした飴を残った手でかきまざしながら首を傾げる。
「じゃあコレでイイっすよ」
グイっと不二先輩の頭に手を回し、強引に頭を自分に引き寄せる。そして極限まで近づいた唇を奪い、不二先輩の舐めていた苺味のキャンディを自らの舌に絡ませる。
「ん・・・ふっぅ・・・」
不二先輩の喉から漏れる声に身体の芯がドキリとする。
「オレはこれでイイっすよ、不二先輩?」
不二先輩の口から強奪したキャンディを舌に乗せて差し出してみせる。
「ごちそうさま、不二先輩」
勢いよくドアを開けて外へ飛び出す。
部室からは菊丸先輩の声が聞こえてくる。
大好きなアノ人とのファーストキスは苺味。できすぎた少女漫画みたいで
吐き気がするほど面白い。
END
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最近、独り苺祭りなので苺ネタが多いんです。
リョ不二でもなんでもねえ気がするのはオレだけでしょうか?(笑)