いちごみるく

いつも不思議に思うことがある。
どうしてあのコは此処にいるんだろう、ということ。
そしてどうしていつも眠っているんだろう、ということ。
もう雪が降ってもおかしくないような季節なのにも関わらず、カレは眠っていた。しかも外で。


また来てる・・・。


コクリコクリと不安定に首を前後に動かし、仮にも他校の校門に凭れ掛かってカレ、芥川ジローは眠っていた。
毎回毎回遊びにくるのはいいけれどいつも眠っているんじゃあ思わず溜息のひとつもつきたくなってしまう。



「ホラ、ジローくん。こんなとこで眠ると風邪ひくよ?」
「不二ぃ!!」


ゴチン
遊びに来るたびにコレだ・・・。ボクはカレに抱きつかれて何度後頭部を強打したことだろう。


「ちょっと、痛いんだけど」
校門の柱に強打した後頭部を摩りながら仔犬のように抱きついてくるジローにほのかに冷たい視線を送る。
ジローはそんな不二の視線に気づかず今にも不二を舐めんばかりに懐いてくる。


ホント仔犬みたい。


「今日は不二にお土産もってきたんだよ!!」
一頻り不二に抱きつくとジローはリュックの中をごそごそとあさりだした。
フウっと息苦しさを逃すために不二は1大きく息を吐く。抱きつかれていたのがイヤだったわけではない。ただ自分より長身のジローが力一杯抱きしめるものだから不二はジローの胸に押し付けられる形になってしまい、かなり息苦しかったのだ。
「ハイ!不二の分!!」
仕舞いには座り込んでリュックの中身を漁っていたジローが勢いよく差し伸べた手にはイチゴミルクのチュッパチャップス。
「これおいCんだよね!不二はイチゴミルク好き?」


っていうか目の前にすでにイチゴミルク差し出されてたら嫌いとか言えないんですけど。


「キライじゃないよ?」
「ホント!?じゃあ食べて!」
すっと不二の手をとり、その運動部のわりに小ぶりで色の白い手に原色ピンクのチュッパチャップスを収める。
「不二の手って色白くてキレイだからピンク色が似合うと思ったんだよね」
にっこりと自分の分のチュッパチャップスをくわえながらジローが言う。
その満面の笑みにいつも自分はほだされている気がする。
いつもなら「キレイ」なんてまして「ピンクが似合う」なんて言われたら相手を病院送りにでもしているかもしれないのに。カレは違った。カレは小さな子どもが素直に甘いものを甘いと言うようにサラリと言葉にだしてくれるから。純粋な気持ちが上手に、何の違和感もなく言葉に乗るコだから。
「うん、ありがとう」
ふわりと微笑み返して口にイチゴミルクを運ぶ。
「甘い!」
イタズラっこのようにウインクをしてジローを見上げる。不二の長い睫毛が更に長く見える。
そして今日初めて見たこの微笑。寒さで少し赤くなった頬と生来の透けるような色の白さ。


やっぱりイチゴミルクだ、不二は

「やっと笑ったね」
にっこりジローも不二に微笑みかえす。
「今日は何して遊ぶ、不二?」



END


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