或る日常的非日常




目が覚めたら知らない女の人が隣に寝ていた、なんてのは
B級ドラマや映画で使い古されたシチュエーションだけど。
今、うたた寝から目覚めた僕の状況は限りなく其れに近くて。
ただ、隣に寝ていたのは見知らぬ女でもなんでもなく。
本来ここにいるはずのない人物だっただけで。




「もしもし?」
遠慮気味に隣で心地よく寝息をたてる彼に声をかける。
寝るのが商売といわんばかりに何時見ても寝ている彼はちょっとやそっとでは
やはり目を覚ましてはくれない。
「起きなさい芥川慈郎!!!!」
滅多に出すことのない大声を彼の耳元で出してみる。
流石の彼も僕の大声に驚いたのか、僕が大声を出した稀な事実に驚いたのか
パッチリと目を覚まし相変わらずのあどけない表情で微笑みかけた。
「おはよ〜不二」
「いや、おはようじゃなくってね・・・」
その毒気のない表情にがっくりと肩が落ちる。
此処まで無邪気なのもタチが悪い。
「え〜っとどうして芥川くんが此処で眠っているのかな?」
苦笑いを浮かべて、ベッドの上で胡坐をかいている本人に尋ねる。
「え?遊びにきたら不二が寝てて気持ちよさそうだから一緒に寝たんだけど」
そう言って芥川くんはまたごろりと横になってうとうとしだした。
「不二も一緒に寝よう?」
もうすでに夢心地の声を上げて手招きをする。
「そうじゃなくて・・・」
「え〜?いいじゃんもう。細かいことは面倒じゃん?」
そういいつつ彼はまた寝息を立て始めた。





半分眠っている芥川くんの話をまとめてみると
僕の家を跡部から聞き出して、遊びにきたら由美子姉さんが出てきて
「周助なら部屋にいるから」と家にあげたら僕がたまたま昼寝をしていて
それを見ていたら自分も眠くなって隣で寝ていた、と。
そんなワケなんだけど。



由美子姉さんのそのアバウトさを責めればいいのか、
勝手に家を教えた跡部を責めればいいのか、
約束もなしに遊びにきた芥川くんを責めればいいのか。




チラリ、と隣で寝ている芥川くんの寝顔を見てたらもうそんなことどうでもよくなってきて。
「もう、いいか」
そうつぶやいて僕もまた、ベッドに転がった。





すやすやと健やかな寝息が2つ、部屋に響いた。
そんな1日。








END






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